シンガポール人も悩み続けた
猛暑は仕事の生産性をいかに落とすか
いよいよ夏本番。日本のニュースは連日のように、国内各所で今年の最高気温が更新されたことを報じている。数日前には岐阜で今年初の39℃超えとなったが、毎年のように40℃超えをマークする地点が出るほど日本の夏の暑さが厳しいことは、多くのシンガポール人の耳に入るほど有名な話だ。
シンガポールは赤道直下の国であるが、日中の最高気温は年間通して30~32℃ほど。日本の夏の暑さは、実は常夏の島の人々にとっても未知の世界なのだ。
そんなシンガポール人もおののく暑さの中、今年もクールビスは始まる。弱冷房の電車に揺られて出勤し、エアコン設定温度28℃の社内で、人は生産性を高めて仕事ができるものなのだろうか。
はっきり言ってしまおう。無理だ。なぜなら、室内の気温が25℃を超えると作業効率が落ちる、と言われているからだ。
日本建築学会が神奈川県の電話交換手100人を対象に1年間かけて実施した調査では、室温が25度から1度上がるごとに作業効率が2%ずつ低下したと公表されている。
また、早稲田大学の田辺新一教授は、東京に建つ標準的なビルで冷房設定温度を25℃から28℃に上げると15%の省エネになり、クールビズ期間中のオフィス1平方メートルあたりで72円の得になるとの試算を発表している。しかしその反面、作業効率の低下で同期間中の1平方メートルあたり1万3000円の損失を生じるという。
シンガポール建国の父である故リー・クアンユー元首相も、「シンガポール、いや、東南アジア諸国にとって20世紀最大の発明は何だと思いますか?」との問いに、こう答えている。
「エアコンです。シンガポールは1年中この暑さです。もしエアコンがなかったら、我々は働く意欲が全く湧きません。欧米や日本を追いかけるなど及びもつかず、今日の繁栄も明日の成長も期待できなかった」