こういった天才営業マンは、得てして“売れない人の気持ち”を十分理解できない。お客様とうまくコミュニケーションが取れない部下に対して「まずは仕事の話を抜きにして一緒に酒でも飲んで来いよ」とアドバイスする。

 一瞬冗談かとも思うが、本人は至って本気だ。

 アドバイスされた部下からすれば、お客様とそんなことができるのなら苦労はしない。

 私自身もハウスメーカー時代にこういったタイプの店長の下についたこともある。この方は天才的な“人たらしタイプ”で、他人がとても真似できるものではなく、アドバイスは全く参考にならなかった。

 となると、私たち部下もだんだん相談しなくなる。

 そういった部下に対して「相談せずに商談をしやがって、勝手にしろ!」とへそを曲げるようになってしまう。

 結局、この店長は部下の面倒を一切見なくなった。

 実を言うと、部下からすれば、こういった上司はそれほどイヤな存在ではない。結果を出さない部下にも興味がないため、うるさく言ってこないからだ。事細かに追及する上司と比べればはるかに楽なのである。

 この店長は力業で数字を残したが、店長以外のメンバーの成績はさっぱりだった。お店としてのノルマは達成していたものの、マネジャーとしては機能していなかった。