J:COMはなぜ企業内大学をつくり「教え合う文化」を育むのか組織にとって「教え合う文化」はなぜ重要なのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

企業の人材育成が、大きく変わり始めています。いま研修は、明確に「経営に資する」ことを目的とし、企業の必要に応じて、社内で作られることが主流になりつつあります。いわゆる、「研修の内製化」です。そして、その目指すところも、個人の知識習得、スキルアップを超えて、組織力を上げることにフォーカスするケースが増えています。本連載では、「教え合う文化」の醸成を企業研修のひとつの理想像とし、研修内製化の専門家である講師ビジョン株式会社代表取締役の島村公俊氏が、「教え合う文化」の醸成を目指す、特徴のある研修を企画・実施する企業にスポットを当てます。(講師ビジョン株式会社 代表取締役 島村公俊、構成/片瀬京子)

いまなぜ「教え合う文化」が
必要とされるのか?

 ビジネス環境が刻一刻と変化していくなかで、育成や研修のあり方が改めて問われ始めています。

「人をどのように育て、成果に繋げていくのか?」という問いは、時代、時代に合わせ、捉え方が変わります。私が社会人になった2000年頃は、まだ企業経営には終身雇用、年功序列型賃金の要素が多く残っていました。年齢が上がれば給与も上がるという時代のなかで、教え合う文化もある程度うまく機能していました。

 しかし、その後、成果主義的人事制度が導入される企業が増え始めました。それから約10年の間、他人に出し抜かれないように、各自がノウハウを閉じ込め、教え合う文化は後退していったように見えます。それは、他者に関心を持つことも希薄になってしまった期間でもありました。若手社員の早期離職が問題となったのも、この期間のことです。

 その後、2011年の東日本大震災を経験した後、企業でCSRのあり方が真剣に問われ始めたように思います。やや行き過ぎに見えた成果主義はマイルドに修正され、改めて個人を尊重しながら、チームの生産性を上げる方向へと振り子が振れました。

 国が主導する「働き方改革」もふまえ、今また企業経営は変わろうとしています。「人を育てる」ということの原点に立ち返り、教え合う文化を、今の時代に合った形で再生させたいと考える企業が増え始めている、と感じます。