伊藤忠商事
伊藤忠商事の東京本社ビル。近年の躍進の背景には「人事」がありました Photo by Ryosuke Shimizu

「Made in Japan」が物語るような、製品のみで勝負できる時代は終わり、サービスとアイデアで勝負する企業が勝ち残る時代となりました。今や経営の浮沈を握るのは「人」です。そして、人材という経営資源を最大限に有効活用できるようにすることが人事の役割です。「管理」するための人事から「勝つ」ための人事へ――。『人事こそ最強の経営戦略』の著者であり人事戦略コンサルティングの第一人者・南和気氏が、人事が経営を変えていった企業を紹介していきます。今回は伊藤忠商事を取り上げます。

5大商社の4番手だった
伊藤忠が見せた近年の大躍進

 日本の“5大商社”の一つとして挙げられる伊藤忠商事(以降、伊藤忠)ですが、商社業界では、長らく三菱商事や三井物産、住友商事に続く4番手でした。

 しかし、2011年度決算で純利益3000億円を突破するという大きな躍進を遂げ(2010年度は1611億円)、過去最高益を更新、続く2012年度決算では3強に食い入り、純利益ランキング3位となりました。

 さらに2015年度、他の商社が資源価格急落で業績悪化に苦しむなか(三菱商事、三井物産は赤字)、伊藤忠は2404億円という利益をあげ、ついに業界ナンバー1の座についたのです。

 2016年度も、資源価格の回復により他の商社が業績を回復するなかでも業界2位の座を維持し、さらに2017年度は、2年連続の過去最高益となる4000億円を達成しています。

 資源価格の影響を多大に受ける商社業界のなかで、その影響を最小化し、極めて安定した事業成長を実現しているのが伊藤忠なのです。創業150年超の伝統を誇る伊藤忠は、2010年4月に代表取締役社長に就任し、現代表取締役会長CEOの岡藤正広氏のリーダーシップの下、近年さらなる変貌を遂げています。

「トレーディング」から「事業性投資」へ
商社のビジネスモデルの変化

 商社のビジネスモデルというと、戦後からその成長を支えてきたのは、一般的にもよく知られる「トレーディング」という貿易の仲介事業です。

 特に製造業を中心とした日本企業の海外進出に合わせて、海外での販売店や、取引企業との仲介を代行し、そのノウハウとネットワークの蓄積が大きな競争力となって事業を拡大してきました。