55歳時点で700万円の預貯金があり、60歳時点で退職金2000万円を手にしたという比較的恵まれた条件の男性が、老後に破綻してしまっている。2人いる子供にそれぞれ結婚式と、住宅購入というタイミングで資金援助したことが響いたのだ。

 シミュレーションを見ただけでは、「こんなにあげなければいいじゃないか」と簡単に思うかもしれない。しかし、FPに相談に行かない限り、普通は、このように未来を見通せない。多くの退職した世代は、大盤振る舞いをしてしまいがちだ。

 その理由は、まず、いつまで生きるかが分からないということ。FPを訪ねてくる相談者のうち、驚くほど多くの男性が「どうせ、自分は長生きしないだろうから」と、長寿リスクを軽く見たような発言をするという。

 第二の理由として、なぜか多くの人が「退職したらつましい生活を送るようになる」と勘違いしていることがある。むしろ、今の退職世代は体が動き、旅行などにも行ける健康寿命が長く、現役時代よりも出費がかさむのだ。

 そして、第三の理由は、リフォームや自動車の買い替えなど、長く生きることで意外と大きな出費があることを無視しがちなこと。

 このように、不確定で予見しづらい状況にもかかわらず、非課税で贈与できる便利な制度があるからと、ホイホイと子供たちに贈与をしてしまっては破綻するのは当たり前の話だ。いったん、贈与したお金は戻ってこない。

 無計画な贈与がもたらす負の影響は退職世代だけではない。

 与えられた子供たち、つまり現役世代のライフプランをも壊してしまうことがある。「なぜ、もらったのに破綻するの!?」と思うかもしれない。しかし、「大きなお金が入ることで勘違いして身の丈以上の消費をし始めてしまう」と藤川氏は指摘する。