おいしくてユニークな朝食を求めて行脚
実在の店とその朝食メニュー情報は必見

 麻里子の趣味は朝食を外食で取ることだ。おいしくてユニークな朝食を求めて東京中を回っている。友人たちや会社の同僚を誘うことも多い。そのなかで、高校の同級生4人の生活と心理が克明に描かれている。同時に、麻里子らが探し当てるおいしい朝食を提供する店とメニューの情報で構成されている。

 この朝食情報は楽しい。やはり東京の最先端の街に出店している最先端の店が多く、都会人というのはこういう情報をつかむのが早いなあと感心させられるのだが、麻里子ら4人は群馬県の高校出身だった。ときどき帰省する場面も出てくる。つまり、地方出身者が発見した情報という体裁なのだ。大都会のしゃれた群像劇ではなく、全国的に共感できる人間像を描いているわけだ。

 それにしても、こんなに多様な朝食が存在するとは驚きである。たとえば、「SUSHI TOKYO TEN、」(新宿)の「すしまぶし」(第57話)は、海鮮丼にアジの刺身が小皿で付き、半分食べるとしじみのだし汁をかけてくれるという逸品。これで1620円だそうだ。朝7時から営業している。

 新宿歌舞伎町の「かぶきち」(第49話)は焼きそば専門店で、朝食用ではなく、24時間営業なのだそうだ。ソース味の焼きそばに生卵がトッピングされる。

 東京以外の朝食も出張先情報として登場する。たとえば、静岡の「おにぎりのまるしま」(第60話)は朝6時30分から営業していて、「静岡おでん」を供する。黒いはんぺんなどのおでんは1本わずか60円、朝食セットは300円だそうだ。

 ごくふつうの目玉焼き、ベーコン、トーストを組み合わせたプレートがメニューにある渋谷の「バイミースタンド」(第50話)にも行ってみたいと思わされる。目玉焼き2個とカリカリのベーコンは定番の朝食だ。

それぞれ葛藤を抱えたアラサー女性の人生と
進化を続ける朝食事情に注目

 物語はけっこう激しく変化していく。里沙は結婚、栞は夫婦の危機を乗り越え、典子は仕事を辞めてニューヨークへ旅立つ。語学学校で学び始めるが、ニューヨークのパワフルな朝食市場も描かれていて面白い。また、里沙の結婚式の場面では、麻里子ら3人の同級生それぞれの視点から、この世代の女性の心理を描いている。

 登場人物がこの高校同級生4人だけならば筋を追いやすいのだが、麻里子の会社の同僚たちや典子の友人のエピソードまで挿入されてくるので、じつは物語は枝分かれして分かりにくくなる。全員同世代の女性だからだ。

 主人公の麻里子も第11巻、第12巻では、ある病気が発見され、会社生活にも行き詰まり、退社を決意するところまで来た。これから彼女の人生と朝食事情はどう変化していくのだろうか。

(ダイヤモンド社論説委員 坪井賢一)