「おごり払い」の再配分効果

 精算方法を「おごり払い」にすると、メンバー構成によっては、メンバー間に経済力の差があって、特定のメンバーに支払いが集中する場合がある。

 これを不公平と考えるか、負担力に応じたフェアな配分と考えるか、あるいはもう一歩進んで「富の再配分(所得と資産の両方を含む)」の一形態として積極的に評価するか。

 ところで、職場単位の飲み会では、給料の多い上司や先輩社員がより大きな額を負担して、主に若手の所得の少ない社員の支払額を少なくする「傾斜配分」(筆者がかつて勤めたある職場ではこう呼ばれていた)が行われることがある。

 傾斜のつけ方はケース・バイ・ケースだが、担税力によって税率を変える累進課税が一定の納得性を以って受け入れられることがあるように、負担の決め方としては一定の説得力を持つ。

 もっとも、1人社員寮で暮らす若手社員よりも、子供の教育費負担と住宅ローンがのしかかっている先輩社員の方が、実質的な負担力が乏しいケースもあるし、誰にどのくらいの負担をさせるのが公平なのかの判断はなかなか難しい問題だ。

 また、個々の社員同士の給料などが異なるのは現実だが、これを「配分表」の形で可視化するのは露骨すぎて無粋ではないか。

 加えて、教育上、「飲み食いには自己負担があることを覚悟しておけ」ということを若手社員に教えることが時には必要なのかもしれないが、若手に少額の負担をさせるくらいなら、大らかに「おごり払い」する方が上司も気持ちがいいのではないか、としばしば思う。

 この点、「おごり払い」が基本の人間関係であれば、「今日は私に払わせてください」と誰かが言って支払いを済ませたらいいので、露骨な配分表を使わずに負担を調整することができる。

 後輩や若手社員が「私にも負担させて下さい」と申し入れてきたら、「将来、後輩の分を払ってあげて下さい。先輩が、後輩の分の勘定を持つのは、言わば社会的食物連鎖みたいなものなのだから、気にしなくていいでしょう」とでも言えば、先輩の側もいい気分で帰宅できよう。