客室係が去り際に
「飲み物お持ちしましょうか」
最近、出張で北京に飛んだ。訪問先が北京市の中心部から西南に少し離れた場所だったため、仕事の利便性を優先して近くのホテルを秘書に取ってもらった。「百納煙台山」というビジネスホテルだった。
タバコを意味する「煙」という文字が入っているのを見たとき、きっと「百納煙」というブランドのたばこ会社が経営しているホテルで、「台山」はその系列下にあるホテルの名前だと早合点してしまった。
というのも、中国のたばこ会社には暴利を貪る会社が多く、蓄財した巨額の資金を不動産につぎ込み、ホテル業などに手を出すケースがよく見られるからだ。
深夜に到着したにもかかわらず笑顔で迎えてくれたフロントマネージャーが、わざわざ私が泊まるフロアまでスーツケースを持って案内してくれた。さらにフロアでは、王さんという服務員が待機しており、客室まで案内してくれた。
王さんが、別れ際に「飲み物お持ちしましょうか。温かいのと冷たいの、どちらがよろしいでしょうか」と聞いてきた。驚きながら温かい牛乳を頼んだところ、しばらくして温かい牛乳が運ばれてきた。
その日、夕食を食べそこなっていた私は、深夜の客室で、温かい牛乳とともに客室に用意されていたクッキーや果物をありがたくいただいた。そんな従業員たちの温かいサービスと笑顔が、旅の疲れを癒してくれた。