「アゴの動きを合わせる」
冗談みたいなスキルがもたらした、冗談じゃない成果

――どのようなことを教わったのですか?

松橋 悩みを抱えている人は、カウンセラーに対して信頼感がなければ、自分の悩みを話したくないですよね。なので、まず信頼感を構築するためのスキルを学びました。

 それが、ペーシングといって相手と動作を合わせる……、たとえば、アゴを合わせたり、身ぶり手ぶりを合わせたり、重心を合わせたり、呼吸や声のトーン、しゃべるテンポを合わせたりと、いろいろ相手と合わせていくんです。

 でも、もちろんすぐに全部はできません。さいわい人と会う仕事だったので、営業の時にペーシングの練習をしようと、習った翌日から一番実践しやすいアゴを合わせてみました。そうしたら、あれよあれよという間に掃除機が売れ出して、翌月には全国トップになってしまいました

――本当にそれだけで全国トップとは驚きですね。とはいえ、アゴと言われても戸惑う人が多いと思います。いったいどうやってアゴを合わせればいいのでしょうか?

松橋 簡単なのは、相手がうなずいた時に自分もタイミングを合わせてうなずきます。うなずきながらしゃべる相手なら、それに合わせて自分もアゴを動かす。ただ、それだけです。

――……。それだけで、いいんですか?

松橋 ええ。その後は、仕草を合わせたり重心を合わせたり、呼吸を合わせたり、相手の言葉をオウム返ししたりと、いろいろ付け加えていきました。でも、最初は本当にアゴを合わせるだけで売れました。というより、「売れてしまった」と言った方が、当時の僕の感覚に近いかもしれません