100業種・5000件以上のクレームを解決し、NHK「ニュースウオッチ9」、日本テレビ系「news every.」などでも引っ張りだこの株式会社エンゴシステム代表取締役の援川聡氏。近年増え続けるモンスタークレーマーの「終わりなき要求」を断ち切る技術を余すところなく公開した新刊『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル』に発売前から需要が殺到している。
本記事では、最新のクレーム事例を特別公開する(構成:今野良介)

クレームを超えた
「カスタマーハラスメント」

私の手元に1冊のレポートがあります。

日本最大の産業別労働組合であるUAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)が、2017年10月に発行した「悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査結果・速報版」です。

その冒頭(はじめに)では、こう警鐘を鳴らしています。

「消費者の不当な要求を受け日常の仕事に支障が生じ、流通・サービス業に従事する労働者に大きなストレスを与える事例があとを絶ちません。消費者からの不当な要求は、ハラスメントの新しい領域としても社会的な問題となっています」

消費者による自己中心的で理不尽な要求は、「悪質クレーム」として、これまでもしばしばマスコミで取り上げられていますが、大きな社会問題として浮上してきました。

消費者による嫌がらせ、すなわち、「カスタマーハラスメント」が取り沙汰されるようになってきたのです。セクハラ(セクシャルハラスメント)やパワハラ(パワーハラスメント)と同様に、「カスハラ」という呼称が定着する日も遠くないでしょう。

このレポートでは、接客対応をしている流通部門の組合員5万人以上の回答をもとに、クレームの現状が浮き彫りにされています。クレームの実態調査として、これほど大がかりなものは聞いたことがありません。調査票の集計結果は、私が日頃、肌で感じていることと大きな違いはありませんが、クレーム現場での過酷な状況が、数字にもはっきりとあらわれています。

「迷惑行為に約9割がストレスを感じている」
「(クレーム対応として)『謝り続けた』と『何もできなかった』が4割を超えている
「約5割が『迷惑行為が増えている』と感じている」

また、現場からの悲痛な肉声も収められています。
たとえば、こんな記述があります。

現場のストレスは増幅し、疲弊している。

「商品の場所を案内したら、遠回りさせられたと怒りだし、『バカ、死ね。辞めろ!』と怒鳴られました」

「商品の在庫を尋ねられ、在庫が無い旨をお伝えしたところ、『売る気がないんか、私が店長だったらお前なんか首にするぞ』と延々怒られました」

「惣菜の価格が間違っていると言われ確認に行こうとしたら、待たせるなと怒鳴られ3時間説教され続けました

「お客様が購入した包丁の切れ味が悪いとの事で返品対応した際、『高い商品買ったのに研いでも切れない』と、その包丁をむきだしでこちらの顔まで近づけてきました

「商品不良のため返金を実施した際、丁寧に謝罪しても納得されず、土下座での謝罪を要求されました」

このほかにも、人格を否定する暴言や何回も同じ内容を繰り返すクレーム、権威的な態度・説教、威嚇・脅迫、長時間の拘束などが報告されています。さらには、近年、急増しているSNSやブログ上での誹謗中傷など、さまざまなクレーム事例が数多く紹介されています。

悪質クレームで企業の
“人手不足倒産”が加速する

雇用の安定や労働条件の向上に努める労働組合にとって、もはやカスタマーハラスメント(カスハラ)は看過できないテーマです。カスハラが、労働者一人ひとりに強いストレスを与え、時に精神疾患も招くからです。

そして、カスハラは、企業経営にとっても重大な問題です。クレームへの対応で従業員が疲弊すれば、一般のお客様に対するサービスの低下にもつながりかねません。

また、多大なストレスを受ける職場では離職率が高まったり、人材が確保できなかったりすることが懸念され、実際にクレームを原因とした「人手不足倒産」に至る企業もあります。

労働・雇用問題は企業の経営リスクとして浮上していますが、じつは、クレーム対応も人材難に拍車をかける要因となっているのです。

1つの事例を紹介しましょう。