東京証券取引所2部や東証マザーズなどに上場している企業の東証1部昇格に、密かに注目が集まっている。なぜなら、東証1部に上場すれば、株価が上昇するケースが多いからだ。
その株価上昇率は、「昇格が公表されてから、実際に東証1部に上場するときには平均8%ほど上昇する」(伊藤桂一・SMBC日興証券株式調査部次長チーフクオンツアナリスト)というほどだ。
なぜ、株価が上昇するのか。最大の理由は、東証1部に上場すれば、自動的にTOPIXの構成銘柄に採用されることにある。
たとえば、国内の年金基金の9割以上がTOPIXをベンチマークしていたり、一定規模の内国株の運用はTOPIX銘柄でパッシブ運用を行っていたりする。このTOPIXパッシブの運用残高は約18兆円という巨額なものだ。また、アクティブ運用においても、TOPIXの構成銘柄を採用することが多い。
つまり、東証1部に昇格すれば株式の買い圧力が高まり、株価が上昇しやすくなるというわけだ。加えて、株式の流動性が格段に高まる点も見逃せないだろう。
そして注目を集めているのは、東証が3月9日に、東証2部と東証マザーズから東証1部に昇格する基準を緩和したことだ。
東証2部やマザーズから東証1部に昇格するためには、複数の基準をクリアしなければならない。株主数が2200人以上いることや、時価総額が40億円以上であること、直前の期末の連結純資産額が10億円以上あること、利益の額が右肩上がりで増えている(直近の2年間において、最初の1年間が1億円以上、次の1年間が4億円以上など)ことなどだ。