発売即4刷。かつてないほど「実用性の高い」文章術としてビジネスパーソンの評価が高い『10倍速く書ける 超スピード文章術』の著者・上阪徹氏が、そのエッセンスをたっぷり紹介する本連載。今回は、企業のSNSアカウントなどでシェアされる「共感を得やすい文章」を書く方法と、逆に、大ダメージを受けかねない「炎上する文章」を回避するヒントをまとめてお伝えする。

「読者の感覚」に近づこう

「わかりやすく役に立つ文章」を速く書くためには、「読者」と「目的」、つまり「誰に、何を感じてもらいたいのか」を決めて、適切な「素材」を集めることが必須です。

(※『超スピード文章術』で定義しているビジネス文章の「素材」とは、「独自の事実」、「エピソード」、「数字」。つまり、読み手に「これを伝えたい」と思う内容そのものを指します)

この記事では、「読者にとっておもしろい素材」を知って、いわゆる「バズりやすい文章」を書くためにはどうすればいいのかということについて、私がやっている方法をご紹介します。そして、逆に、「読者がよく思わないこと」を知って、いわゆる「炎上する文章」を避ける方法をお伝えします。

炎上がシャレにならない時代の文章術。

知らなかった!」「興味がひかれる!」
「これは便利だ!」を集めよう

私が書かせていただいたwebメディアの記事の中には、ありがたいことに1000シェアを超えたものが少なくありません。でもそれは決して、私が「文章がうまいから」ではありません。文才は関係ないのです。大切なのは、「読者が何をおもしろいと思うのか?」をつかめているかいないか、という点です。

ここで、事前に目的と読者を決めておくことが役立ちます。読者と目的に立ち返れば、何がおもしろいかを「設計」することができます。だから、的確な素材をピックアップできる。こうした読者の「おもしろい」を設計するための周辺状況をつかむことを、私は「相場観」を得る、と呼んでいます。

では、そもそも、人はどういうことを「おもしろい」と思うのでしょうか?

「おもしろい」には、いろいろな定義があると思います。でも、少なくとも、「知りたい」とか「興味がひかれる」とか「これは便利だ!」と思うことに対して、「おもしろい」と感じることは多いでしょう。つまり「知識レベル」や「興味関心の度合」によって、「おもしろい」の基準は変わるのです。

だとすれば、あなた自身の感覚ではなく、「設定した読者が何をおもしろいと感じるか?」を知らなければ、絶対におもしろい文章は書けません。

では、具体的にどうやって読者の「相場観」を得るのかを、お伝えしていきましょう。

読み手が触れている「情報」に
自分も触れてみる

私の場合、大きく分けて「人の話を聞く」と「情報に触れる」という2つの軸で、読者の相場に近づこうとします。

たとえば、私が30代の女性向け雑誌に記事を書くとしたらどうするか。

メディアに記事を書く場合は、編集者に読者と目的を聞きます。「誰が読者で、その人は何のためにこの文章を読むのですか?」と聞く。

それと並行して、読者になりそうな知人の30代女性に話を聞くことも多いです。何に「興味」があるのか。どんな「情報」に触れているか。何を知っていて、何を知らないのか。そういうことを聞いていく。

そして、彼女たちが触れている情報に、自分も実際に触れてみます。
女性誌を立ち読みしたり、女性向けのWebメディアの記事を読んでみる。

そこでは、どんな「言葉」が好まれているか。
どんな「商品」やどんな「色」に人気があるか。
そういうことを体感しておくのです。

たとえば、現在、日本最大のWebメディアであるYahoo!ニュースには、あらゆる世代に向けた記事が掲載されています。そこでまず、Yahoo!ニュースの中で想定読者に向けられた記事を見つけて読んでみる。記事の下には、関連記事のリンクが貼られています。それをたどって5、6本も記事を読むだけでも、おおよその相場がつかめるはずです。

体的にどうやって読者の「相場観」を得るのかを、お伝えしていきましょう。

雑誌やwebの記事を書く、というのは特殊な例だと思われるかもしれません。でも、一般のビジネスパーソンが書く文章も、事情は同じです。

たとえば、自社のAI(人工知能)技術に関する紹介文を書くことになったとします。

就活サイトの会社紹介文として学生が読む文章と、IT専門雑誌に寄稿する文章では、目的も素材の選び方も異なることはわかるでしょう。学生全般と専門誌を読む人では、パソコンやITに対する相場感覚が違うからです。

前者ならば、「今、AIがどれだけ注目されているか」というところから話を始めたほうがいい。
後者なら、「技術力を他社と比較できる専門的な話」が中心的になる、といった具合です。

つまり、読者を決めたら、その読者の「相場」を常につかんでおく。そうすることで、「自分」ではなく「読者」にとっておもしろい素材をピックアップできるようになりるのです。

「自分がどう見られているか?」を
知らないと炎上する

もう1つ、押さえておくべきことがあります。
それは、「自分も相場観の対象になっている」ということです。
読者は、あなたが思ってる以上に、「これは誰が書いた文章なのか?」を見ているのです。

たとえば、作家の村上春樹さんの著作で、『職業としての小説家』というベストセラーがあります。極端な話ですが、もし、私が同じタイトルで本を出して、あなたが書店でその本を見つけたら、どう思うでしょう?

「こいつは誰だ?」と思うのではないでしょうか。私は小説家ではありません。ピント外れもいいところです。あの本は、企画もタイトルも文章の内容も、誰もが知る小説家である村上春樹さんだからこそ成立している。

また、フェイスブックなどのSNSでときどき見かけることがありますが、やたらと大言壮語な政治的発言や、事件事故に対する極端な持論を展開する人がいます。企業経営について、なんとも言えない上から目線の書き方をしている一般の会社員がいたりする。

そういう投稿を目にした人は、どう感じているでしょうか。
「それをおまえが言うか」と思っているかもしれない。

1つ、ビジネスシーンの例も挙げておきましょう。

あなたが営業部員で、営業部全員で自社の物流センターの見学に行き、そのレポートを
求められたとしましょう。40代の社員と20代の社員で、書く内容は同じでいいでしょうか。

会社が40代に求めるのは、上層部の目線や、マネジメントや戦略的な観点から書かれたレポートでしょう。もし、20代の社員が背伸びして戦略的な観点からレポートを書いても、おそらく「君にそんなものは求めていない」ということになるでしょう。20代の社員に求めるのは、一般的には、現場に則した目線からのレポートでしょう。

つまり、読み手に「この人はどの立場からモノを言っているのか?」「あなたにそんなこと言われてもね」と思われたら、いくら内容が的を射ていたとしても、伝わらないことが多い。

そういうことに、気づいておく必要があります。

「配慮がある文章」を
書くためには

「相場観」を得ておくことは、「おもしろい」を設計するためだけでなく、シビアな場面にも役立ちます。

たとえば、あなたの部署が業績絶好調なときに上司に提出する報告書と、業績大不振のときに提出する報告書では、同じ書き方でいいかどうか。上司も人間です。上司がどんな精神状態にあるかを察して書かないと、要らぬ「お叱り」を受けるかもしれません。

または、不祥事を起こして社会的に厳しい状況に追い込まれ、メディアから糾弾されている取引先の担当者に、文書を送る場面を考えてみてください。その文末に「御社の益々のご発展をお祈り申し上げます」という、決まり文句を書いてよいかどうか。

さらに大きなくくりで考えると、「世の中がどういう状況にあるか」ということもまた、相場観になりえます。東日本大震災の直後、社会全体が沈鬱な空気になっている中で発信する自社のプレスリリースは、どのようなものがふさわしかったか。業界内で凶悪な犯罪事件が起きたり、社会に大きな衝撃を与えた死亡事故が起きたあとは、世の中がどんな雰囲気になっているか。

そういうことを認識しつつ、適切な素材を集め、また不適切な素材を削るということもまた、相場観を持つことで可能になるのです。

つまり、相場観は「武器」であり「防具」にもなるということです。相場観を身につけることで「何がおもしろいのか」「何を書いてはいけないのか」ということを戦略的に考え、素材をピックアップできるようになるのです。

なお、そうやって集めた素材をどう素早く文章化するか、素材をどう並べることがベストなのか、などという点については、私が23年間の中で見出した独自のノウハウを紹介しているので、ぜひ『超スピード文章術』をご覧になって、使い倒してください。

(参考記事)
なぜ、「しゃべるように書く」と絶対伝わるのか?