主要国の金融行政を左右する気鋭のエコノミストがユーモアたっぷりに語る、ふつうの人のための資産運用の教科書『世界最強のエコノミストが教える お金を増やす一番知的なやり方』が刊行された。「金融マンの話は聞くな」「逆張りせよ」など刺激的な内容が話題の本書の「はじめに」を順次公開していこう。前回の記事はこちら

前イングランド銀行総裁が絶賛!『世界最強のエコノミストが教えるお金を増やす一番知的なやり方』の前文を公開(2)

「手堅い投資家」と
「賢明なる投資家」はどう違う?

 本書で紹介する賢明なる投資の原則からは、一般常識とは異なる結論が導き出されることになるだろう。
 いや、もっと手堅い方法から入りたいのだが、と思うだろうか。

 私としてもそちらをお勧めしたい。
 手堅い投資家とは、プロの投資家のコンセンサスにつき従っていく投資家のことだ。

 金融街には横並び思考が浸透しているので、実は大半のプロ投資家がやっているのもこれと同じことである。
 公開情報や効率的市場の性質を利用すれば、あなただってそのコンセンサスに便乗できる。
 なにも横並び思考に大枚を払わなくても、タダ乗りが可能なのである。

 手堅い投資家は、市場心理に造詣が深い人々に畏敬の念を抱いている。さもなければ、あれほどたっぷり手数料を払わないはずだ。

 手堅い投資家はまず、金融市場の専門性を疑ってかかることを学ぶところから始めよう。

 これが賢明なる投資家ともなれば「市場が何を考えているか」などどこ吹く風。
 ただし、市場の失敗や非合理性が生み出すチャンスには目を光らせる。

 手堅い投資家にとって、リスクとは列からはみ出すことだが、賢明なる投資家にとってのリスクとは、カネを失うことである。

 ただ、列からはみ出すのは居心地の悪いものだ。
 それに、手堅い投資家といえどもプロ投資家の平均程度には稼げるのだから悪くはないし、ほとんどの個人投資家よりは良い成績を上げられる。

 お勧めしたいのは、まず手堅い投資家として始め、経験と自信を身に着けるにつれて、賢明なる投資に向ける運用の割合を増やしていく戦略である。

 賢明なる投資家は自分の頭で考え、市場の知恵を信じ込まず、自身でリスク評価を行える。
 超然としていればこそ、損失のリスクを抑えながら、より良いリターンが得られるのである。