そして映画では下記のようなセリフを通じて、女性の役割が会社では補助的な仕事に限定されていた様子を理解できます。以下、今の感覚で見ると差別的な表現が含まれますが、当時の雰囲気を感じる趣旨に加えて、オリジナルの改変ができないことをご理解いただいた上で、お読みください。

誠 「どこで油を売っていたんだよ、この忙しい時に」
紀美子 「何言ってんのよ。お名指しのゴハチ(注:上客の隠語)のお供でお店の中を上がったり下りたりしてきたのよ、何が悪いのよ。最近入ったばかりなのに生意気な口を利かないでちょうだい」
誠 「生意気?」
紀美子 「大学じゃ礼儀ってもの教えないの。ここではあなたよりも私の方が4年も先輩なんですからね」
誠 「先輩なら先輩らしくしたらどうだい。ロクに(注:商品の)染め(注:物)の良しあしも分からないクセに。だから女はダメなんだよ」
紀美子 「女はダメって、それどういう意味?」
誠 「漫然と暇つぶしと小遣い稼ぎに勤めてんだろ。厳しさがないってことだよ」
紀美子 「まー、失礼ね。私は暇つぶしでも小遣い稼ぎでもないわよ。この仕事に生きがいを感じてやってんのよ。皆さんと一歩も引けを取らないわ」
誠 「ほおーっ。じゃ君は女のクセに主任から課長、部長になるつもりなの」
紀美子 「まーっ!『女のクセに』とは何てこと言うの。ええ、私は部長にでも重役にでもなるつもりでやってんのよ」

 その後、別の男性店員からたしなめられると、誠は「その意気込みの割合には商売に対する知識がなさ過ぎるな」と言い捨てて立ち去っただけでなく、2人を取りなした男性店員からも「君は女なんだから。控えめにしてりゃ問題が起こらない」と言われ、紀美子はショックを受けます。

 場面は食堂に変わり、誠の言葉を思い出して紀美子は泣きながらラーメンを食べています。そこに節子が声を掛けると、紀美子はこんなセリフを発します。

「同じ売り場に嫌なやつがいんのよ、入ってまだ三月(注:みつき)もなんないのに威張り散らして。女ってそうよね、男の社員は係長になって、主任になってどんどん出世するでしょう。女の社員は10年勤めたってただの売り子よ。もう私、それ、もう考えると、かな、悲しくって腹が立って(略)あんた腹が立たない?女はただ漫然と暇つぶしと小遣い稼ぎに働いているなんて言われて」