身近な雇用改善で
アベノミクス支持

「改憲」問題でも、戦力の不保持を規定した現行の憲法9条2項を維持したまま、自衛隊の存在を明記する規定を追加するという、より抵抗の少ない最小限の改憲を目指す安倍首相に対し、対立候補の石破元幹事長は、9条2項の削除という原則論にこだわる一方で、「他党との丁寧な議論を重ねる」必要があると言うだけだ。

 石破氏の主張が今回、自民党内で強く支持されているように見えない原因はそこにあるのだろう。

 一見、保守的に見える原則論で安倍首相の改憲を批判し、そのことで護憲派にも媚を売っているようにも見える。だがこのことが、石破氏は本当はどうしたいのか分からないという印象を与えているのではないか。

 功利主義的なメンタリティーが最も強く反映されているのは、“経済政策”に対する評価だ。

 アベノミクスが一定の効果を上げているかどうかについてはさまざまな議論があるが、「経済学オタク」ではない普通の若者に関心があるのは、マクロ経済の分析ではなく、失業率や有効求人倍率、大卒者の就職内定率、官公庁や大企業の募集定員など、自分たちに直接、関係のある身近な指標の数字だろう。

 完全失業率と有効求人倍率の改善はアベノミクスによるものではなく、リーマンショックで大きく落ち込んだ時期からの回復が進んでいるだけだという議論があるが、当事者にとっては、そのことはどうでもよいことだ。

 自分にとって有利な状況であれば、それを維持してほしい、誰が保証してくれるのか、というだけのことだ。

 現実的、合理的思考の若者にとって、アベノミクスの間違いを指摘するばかりで、より安定した豊かな状態へ移行するための具体的ヴィジョンを示すことができない「反安倍」陣営の主張はさほど魅力的ではないのだ。

 年金や社会福祉に関心を持つ中高年層や、待機児童問題に関心を持つ子育て世代にとっても、基本的には同じことだろう。

 選挙で一定の反安倍票があるといっても、それは自民党の反主流派や野党を支持してというよりも、仕方なく入れるかどうかの違いである。

 本当に現在のシステムを変えたい、そうでないと日本がダメになると確信しているのであれば、若者が真に希望を持てる社会への構想をじっくりと構築し、時機を待つべきだろう。

 メディアやネットの注目を集めようと焦って、安倍首相個人を標的にした攻撃を続ければ、潜在的支持層が減っていくのは当然だ。