「交通事故被害者の子」にも
いろいろな境遇がある

 自然教室は、毎回場所と内容を変えて行われる。4回目になるこの夏は、河口湖周辺で、火起こしから始めるカレー作り、チーム対戦ゲームやスイカ割り、そして洞窟探検を盛り込んだ1泊2日のキャンプだ。

 新宿駅から約1時間後に大月駅で下車すると、そこで待っていたバスに乗り換え、最初の目的地である「森と湖の楽園」へ向かう。途中、雄大な富士山を眺めながら、自己紹介が始まった。職員たちが先頭切ってマイクをとり、「おやじ」「アロハゴリラ」「社長」と子どもたちから呼んでほしい自分のニックネームを紹介。そこここから笑いが漏れる。

 この自然教室には校歌もある。

「みんなで校歌を歌おう!」と“おやじ”がマイクを握りしめ、AKB48の「365日の紙飛行機」を歌い始めた。がなり声が響き渡る中、歌詞のコピーがみんなに配られる。

「私、見なくても歌えるよ」

 小学4年生のSちゃんが振り向いて自慢げにつぶやいた。「おじさん下手だね」と、冷静な判断も下される。

 参加した子どもたちの境遇はさまざまだ。「事故被害者の子どもという枠で見ればみんな同じですが、状況は1人ひとり違います」と、被害者援護担当の北嶋信也さん。交通事故で片親を亡くした子もいれば、重度の障害を負って寝たきりになりコミュニケーションが取れなくなった人の子、半身不随となって車イスの生活をする人の子もいる。乳児の時に父親を亡くし、お父さんを知らずに育ってきた子もいる。

 そんな子どもたちへの支援として、NASVAの被害者援護では、被害者の子どもたちへの経済的支援や自然教室の他に、年に一度、子どもたちと家族が一緒に交流できる「友の会の集い」を都道府県ごとに実施する。

 同じような境遇の人たちが集まり本音で話せる場を提供することで、心のケアにつながればとの狙いだ。また、企業などからの招待で、テーマパークへの遠足や、スポーツ観戦などのイベントへ一緒に参加する機会も設け、楽しい思い出作りも提供する。絵画、書道、写真のコンテストを通して、子どもたちが表現する場を設ける活動も行ってきた。