世界標準の教養として、特に欧米で重要視されているのが「ワイン」である。ビジネスや政治において、ワインは単なる飲み物以上の存在となっているのだ。そこで本連載では、『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』の著者であり、NYクリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとしても活躍した渡辺順子氏に、「教養としてのワイン」の知識を教えてもらう。

ボルドーでは「シャトー」、ブルゴーニュでは「ドメーヌ」

 ワインではよく「シャトー」「ドメーヌ」という言葉を聞くと思います。これらはともに、生産者のことを指します。フランスのボルドー地方では生産者を「シャトー」と呼び、ブルゴーニュ地方では「ドメーヌ」と呼ぶのです。

 これらの違いが生まれた発端は、18世紀のフランス革命にありました。フランス革命でその特権を奪われた貴族たちは、所有するぶどう畑も取り上げられてしまいます。しかしボルドーでは、革命後に貴族や名士が再び畑を買い戻したため、そうそうたるシャトーが構えられ、広大なぶどう畑で大量のワインがつくられたのです。

ボルドー5大シャトーのひとつ「シャトー・マルゴー」の外観。photo:BillBl

 ボルドーの有名シャトーの外観は、まさに「シャトー(城)」です。周囲には並木道が続き、立派な建物や庭園があり、湖には白鳥が泳いでいて、今でも貴族が住んでいるかのような気品と威厳があります。

 一方のブルゴーニュ地方では、教会や修道院が所有していた畑の大半が細分化されて農民たちに分け与えられました。小さく区分けされた畑は面積も限られ、大量にワインを生産できません。そのため、ボルドーのシャトーのような大きな醸造所は必要なかったのです。

 ブルゴーニュには、ボルドーのようなそびえ立つシャトーは見当たらず、のどかで牧歌的な光景が広がっています。ブルゴーニュにある世界最高峰のロマネ・コンティのドメーヌでさえ、派手な看板や門構えはなく「作業所」といった見栄えなのです。