世界標準の教養として、特に欧米で重要視されているのが「ワイン」である。ビジネスや政治において、ワインは単なる飲み物以上の存在となっているのだ。そこで本連載では、『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』の著者であり、NYクリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとしても活躍した渡辺順子氏に、「教養としてのワイン」の知識を教えてもらう。

フランスワインの質とブランドを守る「AOC法」

 世界的に知られるワイン伝統国といえば「フランス」です。では、なぜヨーロッパ各地に広がったワインが、とりわけフランスでこれだけ発展したのでしょうか。ここには歴史上の経緯や地理的な理由などさまざまな要因が隠されていますが、大きな理由としては、フランスが国をあげてワインの品質やブランドを法律で守ってきたことがあげられます。

 ワインが一大産業となったフランスでは、法律でワインの品質が厳しく管理されてきました。1905年には生産地名の不当表示を取り締まる法律を制定し、1935年には産地のブランドを守るための「AOC法(原産地統制呼称法)」を制定しています。使用可能なぶどう品種や最低アルコール度数、ぶどうの栽培・選定方法や収穫量、ワインの醸造方法や熟成条件まで、産地ごとのルールを細かく定めたのです。

 こうした国による厳しい管理によりワインの品質とその土地の個性が保たれ、伝統国としてのブランドが守られてきたのです。これらの規制をクリアしたワインには、ラベルにAOCをクリアした旨を表記でき、国のお墨付きワインとして売り出せるわけです。

 ここでかんたんにフランスワインのAOC表記の見方を説明しておきましょう。AOCの基準を満たしたものはラベルにそれを記載できますが、単に「AOC」と書いてあるわけではありません。ラベルには、「Appellation ○○ Contrôlée」と記載されており、この「○○」の部分に産地が入ります。

AOCが表記されたフランスワインのラベル。ここで生産地域がわかる

 たとえば、AOCで定められたボルドー地方の規定をクリアしたワインであれば、「Appellation Bordeaux Contrôlée」と記載できるわけです。さらに、ボルドー地方のメドック地区の規定をクリアすると「Appellation Medoc Contrôlée」と記載でき、基本的には、地域が狭くなればなるほど規定も細かくなるため、そのワインの格は高くなります。

 また、必ずしもAOCに入るのは地域名だけではありません。村名の場合もありますし、畑名が入ることもあります。この場合、地域がより限定されているので、さらに格は上がります。

 なお、2008年にヨーロッパのワイン法が改正されたことで、それ以降につくられたワインには「AOP」となっているものもあります。「Appellation ○○ Protégée」という表記です。いずれにしても、これらの表記があるワインは、その地域や村、畑を名乗るための条件を満たした、質の高いワインということになり、ここを見ればそのワインの産地が一発で確認できるのです。