世界標準の教養として、特に欧米で重要視されているのが「ワイン」である。ビジネスや政治において、ワインは単なる飲み物以上の存在となっているのだ。そこで本連載では、『世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン』の著者であり、NYクリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとしても活躍した渡辺順子氏に、「教養としてのワイン」の知識を教えてもらう。今回は、欧米に根付くワイン文化について解説してもらった。

物議を醸した小泉首相に出された白ワイン

 2006年、訪米を果たした小泉元首相とブッシュ元大統領との仲むつまじい姿を世界中のメディアが取り上げました。エルヴィス・プレスリーの大ファンである小泉首相を、ブッシュ大統領がテネシー州メンフィスにあるエルビス邸へ案内。喜びのあまり浮かれる小泉首相とその様子に戸惑うブッシュ大統領の姿を、ワシントンポストが皮肉交じりに報道していたのが印象的でした。

 その前日、ホワイトハウスでは、小泉首相の歓迎公式晩餐会が開催されました。そこでは、クロ・ペガスがつくる白ワイン「ミツコズヴィンヤード」がサーブされました。クロ・ペガスとは、1984年にカリフォルニア州のナパヴァレー北部に広がるカリストガ地区に設立されたワイナリーです。ワイン名に「ミツコ」と記されている通り、オーナーご夫妻の奥様は日本人女性。味もさることながら、日本人がつくるワインということで歓迎の意を表わしたのだと思います。

 こうした心遣いから、小泉首相は最高のもてなしを受けたものと思われていました。ところが、この蜜月な日米関係に対して、とあるインターネットサイト上に疑問が投げかけられました。