論文はまず、がんは、細胞が細胞分裂を繰り返し、成熟していく過程で、細胞分裂が失敗して発生するものだと説く。失敗する原因は、細胞分裂で生まれる不純物だ、とする。

 一方で、がんは十二指腸では「発生しない」(実際は少ないながら発生する)ことから、十二指腸の消化酵素が細胞分裂を失敗させる悪い物質を分解し、がんを防いでいると、論文では考察している。

 イソジン牛乳の仕組みについて、「消化酵素を全身に広げたら、全身のがんが無くなるんじゃないかということ」と医師は説明した。

 普通は腸内にとどまっている消化酵素を、ヨウ素の力で血液に送り込み、全身をめぐらせる。すると、酵素の力でがんが防げるのではないか。それを可能にし得るのが、ヨウ素と牛乳の脂肪が結びついた沃化脂乳液。つまり、イソジン牛乳という論理だ。

 とはいえ、医師1人の「考え」だけでは普通、「治る」とは言えないはず。「論より証拠」の言葉の通り、実際に医療の世界では、「実際に人に試して有効だった」と確認されたものだけが、有効な治療法として認められている。

 そうした根拠についても聞いた。

「記憶にあまりないが、5~6人は治った人はいる」

「彼らの主治医は沃化脂乳液(イソジン牛乳)で治ったとは言わん。抗がん剤とかで治ったと言うわけ」

「けしからんと思っとるね」と、医師は話した。しかし、患者が主治医の治療も受けていたなら、その治療で治ったと考えるのも自然だ。論理的に、イソジン牛乳だけで治ったと言い切ることができる根拠を、医師が取材に示すことはなかった。

 医師は、イソジン牛乳療法を紹介するメールを、全国の「おそらく100団体を超えている」数の患者会に送り続けてきた、と説明した。情報を伝え聞いたがん患者が医師を訪ね、教えを請うこともたびたびあったという。「治った」というのは、そうした人々からの報告が根拠だと語った。