そしてイノベーションは速度が命なので、研究開発のためには企業横断的・研究機関横断的なオープンプラットフォームづくり、そして若手研究者・技術者の育成と活躍の場の提供が重要になってくる。

 一方でこうした激しい技術転換が起きる時には、政府が常に正しい判断をする保証はない。情報公開と決定プロセスの徹底的な透明性、公正なルール、若手研究者・技術者の育成と予算の配分が不可欠になる。

 ところが、安倍政権ではここでも全く逆の方向に向かっている。「縁故資本主義」が横行しているからだ。

 リニア新幹線建設では、安倍首相の友人である葛西敬之JR東海名誉会長 が関与し、財政投融資資金が注入されているほか、受注をめぐってゼネコン談合も起きた。原発輸出では、同じく首相の友人である中西宏明日立会長が進めるイギリスでの原発事業の資金調達に政府保証がつけられた。

 ニューライフサイエンスでは、首相の“腹心の友”加計孝太郎氏が理事長をする加計学園問題が起き、スパコンではペジーコンピューティングで助成金詐欺が起きている。東京オリンピック向け施設の建設では大手ゼネコンが潤うだけだろう。

 政府が新たな役割を担いながら世界が産業構造の転換を進めている時代に、日本だけは、太平洋戦争の際、当時すでに空母と戦闘機の時代になっているのに、「世界一」だと言って戦艦大和の建造に走り、不沈艦だと言い張っていたようなものだ。

 限界が見えてきたアベノミクスがいよいよ機能不全に陥った時、先端産業で敗北した日本の産業の悲惨な状況が一気に露呈していくことになるだろう。安倍政権は限界まで金融緩和を続けていくだけで、日本の未来のことは何も考えていないのだ。

(立教大学特任教授 金子 勝)