普通に考えれば
北朝鮮は核を手放さない

『隣人、それから。38度線の北』の写真
『隣人、それから。38度線の北』より

初沢 朝鮮戦争をとにかく終結させたいという思いは、金日成政権の時代から一貫していて、アメリカに対してボールを投げ続けてきた。しかし、オバマ大統領が典型的ですが、北の意向を無視、あるいは軽視し続けたことで、結果としてここまで核開発が進んでしまった。

 あくまでも交渉のカードだったのが、気づいたら二十数年でアメリカに届くミサイルと核の完成が近づいてしまった。朝鮮戦争終結と引き換えに非核化することに対し北朝鮮の軍人や開発者が「こんなに頑張って開発したのに手放したくない」とは思わないと僕は考えています。使うための核ではないというのが前提だから。

 僕が現地で見た限り、平壌も地方も国連の経済制裁が効いているとは思えない状況の中で少しずつ発展し始めているのは事実で、写真集はその報告ともいえる。北朝鮮からすると、厳しい経済制裁で追い込まれて、ここで対話をしなきゃどうにもならんという状況ではなかった、というのが僕の見立てです。それよりもトランプ大統領が誕生し、韓国に文在寅大統領が登場してくる中で、これは対話の流れだと彼ら側から主体的な平和外交攻勢に打って出たのでしょう。

三浦 私は北朝鮮が核を手放すとは思っていません。その理由はもろもろありますが、事実上の核保有国となることしか、客観的に言っても体制の安定と国防を約束する手段がありませんから。

 一連の交渉が北朝鮮にとって有利な流れにあることは確かです。まず、北朝鮮が初沢さんの写真集にあるようにどんどん発展してきているのは事実だと思うんですよ。制裁下にあるとはいえ、核弾頭を全部耳をそろえて差し出しますから許してくださいというところまで、追い込まれていたわけでもないのは明らかですよね。米朝首脳会談でまとまった合意では、北朝鮮は従来の立場から何も譲っていない。それらを総合して考えると、制裁で追い込まれて核放棄を決意したという仮説が誤っているのは明らかで、争う余地はないと思います。

 ただ戦争の脅しにビビったっていうのは……。

初沢 それはあると思います。