仮想通貨取引のためのモニターがずらりと並ぶ仮想通貨取引のためのモニターがずらりと並ぶ Photo by Naoki Nemoto

格差や貧困問題の是正が放置されているうちに、「アンダークラス(パート主婦を除く非正規労働者)」が900万人を突破、日本は「階級社会」への道を突き進んでいる。中でも「中間階級」が崩壊、新たな貧困層が生まれてきた。それは、どん底一歩手前の「マイルド貧困」とも呼べる新たな階級だ。そこでDOL特集「『マイルド貧困』の絶望」第8回は、そこそこの収入があったのに仮想通貨にのめり込み、全財産が919円しかなくなってしまった男性を追った。(ライター 根本直樹)

一般人が“億り人”になれる
最初で最後のチャンス

 田尻健斗(仮名・36歳)が初めて仮想通貨に手を出したのは、昨年8月のことだった。

 会社のデスクでスマホ画面を見つめていた彼は、突然、熱に浮かされたような顔でオフィスを飛び出すと、近所のコンビニに向かった。ATMを操作し、預金残高を確認する。120万円。全財産だった。全額を下ろした田尻は、スマホ画面を見ながら仮想通貨取引サービス会社「コインチェック」の口座に25万円を入金。しかし、これが悪夢の始まりだった。