神奈川県には現在、11の高校内に「カフェ」がある。若者支援の一環として行われている生徒たちへの場所提供は、子どもたちに悩み相談ができる人の存在を知らせるだけでなく、問題を早期発見して、ソーシャルワーカーや関係機関につなげる役割を果たしている。そんなカフェのひとつ県立田奈高校の「ぴっかりカフェ」に1ヵ月ボランティアとして入ってみた。(取材・写真・文/フリーライター 大藪順子)
図書館でカフェ
生徒たちと「顔を合わせる場」に
昼休み前の神奈川県立田奈高等学校の図書館。黒いエプロンを付けた大人たちが、お椀にインスタントみそ汁をセットしたり、飲み物とコップを並べたり、お菓子を皿に盛ったりと、忙しく働いている。
「これ卒業生からの差し入れです。一緒に出しといてください」
司書の松田ユリ子さんが、うまい棒の大袋をボランティアの1人に手渡した。
毎週木曜日の昼休みと放課後、この図書館に「ぴっかりカフェ」がオープンする。運営を手伝うのは、学校外から参加するボランティアたち。高校生たちに飲み物やお菓子などを提供する。
昼休みが始まると、生徒たちがどやどやとやって来た。入口でプラスチックのコップをとり、奥の「ドリンクバー」でほしい飲み物を入れてもらう。弁当を持参している生徒もいるが、生徒によっては、ここで提供されるインスタントのみそ汁と菓子類がランチの替わりとなる。
「クリエイティブスクール」と位置付けられているこの田奈高等学校では、学力を問わず意欲を重視した入試が行われる。中には、さまざまな理由で中学までに十分な学力を身につけることができなかった生徒も多い。校則はゆるく、頭髪や化粧などは自由。それぞれが好きなスタイルで学校生活を送っている。外国にルーツを持つ生徒もたくさんいる。