中でも、今造はこの約15年で、国内建造量ナンバーワンにのし上がった(下図参照)。

 その強さの秘訣をひもとくと、瀬野汽船をはじめとする今治市周辺の「海事クラスター(集積)」の存在が浮かび上がってくる。

 造船会社が仕事を受注するには、とにもかくにも船の発注者がいなければならない。簡単に言えば、発注におけるメーンプレーヤーは、荷主の荷物を運ぶ海運会社と、その海運会社に船を貸す船主(船のオーナー)になる。

 まず今治には、冒頭の瀬野汽船の他にも、瑞穂産業や洞雲汽船、福神汽船といった有力船主がごろごろいる。しかもこの有力船主たち、単に船を保有しているだけではない。

 「長い付き合いをする中で、貸し借りは必ずある世界だ」(瀬野洋一郎・瀬野汽船社長)。仮に、海運会社がどうしても戦略的に獲得したい運送契約があるときは、「用船料(船の賃借料)については後で相談に乗るから、(船の手はずを整える前に)荷主と契約を結んできていい」と後押しすることまであるという。

 このいかにも昭和の義理人情的取引が当然のように続いているからこそ、海運会社は今治船主との関係性を重要視し、今治に仕事の“種”を落とし続けるわけだ。