日本の造船業が青息吐息だ。かつて日本勢は、安い給与水準と積極的な設備投資で欧州勢を退け、世界の造船業界を席巻した。それと同じことを、日本は中国・韓国勢に仕掛けられているのだ。しかも今は造船業界全体が深くて長い不況をさまよう。中韓勢のように国の強力なバックアップがない上、社内からもコンスタントな利益創出を求められる総合重工系の造船部門は、この荒波をどう乗り越えるのか。重工系の造船部門は、日本の近代化を担い、高度経済成長期を支えた名門中の名門。盛者必衰の理と簡単に片付けられないためにも、生き残り策を真剣に考えるべきときが来ている。(*本記事は『週刊ダイヤモンド』2018年9月8日号第2特集「国内首位 今造すら赤字 造船「敗戦処理」」を一部編集して特別公開するものです)

高度経済成長を牽引したかつての名門、重工系造船部門の、敗戦処理が始まろうとしています。
高度経済成長を牽引したかつての名門、重工系造船部門の「敗戦処理」が始まろうとしている Photo:Bloomberg/gettyimages

「昔はね、OBに『造船会社はクジラだ』って言われた。たまに水面に浮上して息ができれば生きていけるんだって。でも今そんなふうに考えてたら、会社を維持できない」

 三井E&Sホールディングス(旧三井造船)傘下の三井E&S造船社長である古賀哲郎氏ははっきり言うが、何も先人たちがのんきだったわけではない。

 船の世界は、景気や為替によって市況が揺れやすい。だが世の中の荷物の9割以上は船が運んでいるのだから、不況になってもじっと我慢していれば稼げるときが必ず来る──。これが“クジラ理論”で、造船関係者は経験則からこれを信じて疑わなかった。