日本の造船業界は深くて長い不況の真っ只中にある上、国の強力なバックアップを得て突き進む中国・韓国勢を相手にするという、最悪の条件の中で舵取りをしなければならない状況だ。一方で、社内からはコンスタントな利益創出を求められる。総合重工系の造船部門は果たしてどのように生き残りを図るのか。”重工系”造船会社の一角である川崎重工業の餅田義典・常務執行役員船舶海洋カンパニープレジデントに話を聞いた。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 新井美江子 ※餅田氏の「餅」の字の食偏は正式には終端部が縦画からの撥ねに点画の形)

餅田義典・川崎重工業常務執行役員船舶海洋カンパニープレジデント
もちだ・よしのり/1956年、広島県出身(62歳)。81年、東京大学工学部を卒業し、川崎重工業入社。入社後は一貫して造船畑を歩んできた。勤務地としては坂出工場(香川県)が長いが、商船事業の肝となる南通中遠海運川崎船舶工程有限公司(NACKS)に2度にわたって身を置いた経験もある。2015年、執行役員船舶海洋カンパニーバイスプレジデント。16年から現職 

――造船業界が今までにないくらい厳しく、長い不況に直面する中、川崎重工業は2017年3月に、15年度から営業赤字が続いている船舶海洋事業の構造改革を発表しました。それまで、商船については他の総合重工系との統合可能性が幾度となく取り沙汰されていましたが、ここで示されたのは独立再生の道でした。

 16年10月に構造改革会議を設置し、金花芳則社長以下、OBもアドバイザーに加えながら船舶海洋部門の事業構造を見直しました。他社との統合や事業売却など、あらゆる選択肢を検討したのですが、現時点では商船の国内建造の縮小と中国シフトが現実的かな、と──。

――具体的には、坂出工場(香川県)のドック削減による国内の商船事業の約3割の縮小。そして大手海運会社である中国遠洋海運集団(China COSCO Shipping)との造船合弁会社で、コスト競争力のある南通中遠海運川崎船舶工程有限公司(NACKS)、大連中遠海運川崎船舶工程有限公司(DACKS)との連携強化ですね。

 はい。14年くらいから造船業界は不況に突入してしまった。こういう、発注が少なく、船価も下がっているときに他社と統合しても赤字が増えるだけ。普通、統合というのはお互いの足りないところを補完し合ったり、規模を拡大したりしてマーケットを支配するためにするものですが、ちょっとそういう時期じゃないと判断しました。