クラウド移行で課金モデル定着
積極M&Aも奏功

 流れを一変させたのが、14年に就任したサティア・ナデラCEOだった。

 就任時のスピーチでクラウドとモバイルへの事業シフトを目標として掲げ、一度もウィンドウズという単語を発しなかった。リナックスの開発元である米レッドハット、米セールスフォース、アマゾンなどの“商売敵”とも提携。独占的に市場を牛耳る覇者の顔はがらりと変わった。

 変貌はCFに最も顕著に表れている(図(3))。ゲイツ、バルマー時代の最後の3年間とナデラ時代の直近3期の平均値の比較でそれは明確だ。営業CFはバルマー時代の30%増、FCFは同4.5倍に増えた。

 勝因はクラウドビジネスへの全面移行だ。事業への参入時期こそアマゾンに遅れたものの、実はマイクロソフトほどクラウドの恩恵にあずかっている企業もない。

 何しろ、ウィンドウズがインストールされたパソコンは全世界に10億台ある。さらに、マイクロソフトオフィスなど、市場を寡占するソフトウエアの既存ユーザーも無数にいる。これをオフィス365というクラウド経由の継続課金モデルに代えたことで、キャッシュを生み続ける「リカーリングビジネス」が誕生した。

 ナデラ時代の変化はもう一つある。バランスシートだ。

 ナデラCEOは就任後に、相次いで大型買収にも乗り出した。16年に業務用SNSの米リンクトインを262億ドルで、今年はソフト開発コミュニティーの米ギットハブを75億ドルで買収。前者はマイクロソフト史上最大規模の買収となり、後者は同社の“非オープンのウィンドウズソフト”の伝統を根本から覆すものだった。

 マイクロソフトは、ゲイツ時代から資産の部の現金および現金同等物と、負債・資本の部の株主資本が非常に厚い企業だった(図(4))。だが、ナデラ時代にはこれが逆転。データセンター設備などの有形固定資産やM&Aに伴うのれん代などの非流動資産の比率と、買収に伴う有利子負債などの非流動負債の割合が増えた。例えば、13年度末に126億ドルだった有利子負債は、18年度末には722億ドルに跳ね上がっている。

「借金体質になった」わけだが、手元に厚い資本を持つより、成長に向けてリスクを取り投資することは、より時代の流れに沿った経営判断といえる。

 過去にため込んだ巨大な資産があるからこそ、攻勢に転じたときの勢いは創業20年そこそこのライバルたちよりも強い。生まれ変わったマイクロソフトに世界が熱い視線を注いでいる。