世の中がスマートフォンへ大きくシフトすると、パソコン全盛期の覇者だったマイクロソフトは停滞するようになった。しかしサティア・ナデラがCEOに就任すると、一転して好転する。株価も史上最高値を記録。そこにはどんな戦略があったのか?なぜディスラプション(破壊)の敗者から勝者へと舵を切ることができたのか。グーグル、ソフトバンク、ツイッター、LINEで「日本侵略」を担ってきた戦略統括者・葉村真樹氏の新刊『破壊――新旧激突時代を生き抜く生存戦略』から、内容の一部を特別公開する。落合陽一氏推薦!

巨人マイクロソフトは、なぜ復活できたのか?

スマホ時代に出遅れたマイクロソフトが見出した「魂」

 パソコン全盛期の覇者だったマイクロソフトは、世の中がスマートフォンへ大きくシフトすると、低迷する株価に悩まされる状況にあった。

 ビル・ゲイツの後を次いで2000年からCEOの座についたスティーブ・バルマーは、2000年代の前半の売上や利益などの業績は緩やかながらも伸ばしていたが、2000年代後半に入るとそれも停滞するようになった。

 そして、そんな停滞が顕著となったのが、2011年のことであった。

 アップルはiPhone4SとiPadをリリースし、グーグルのアンドロイド端末が世界中を席巻するようになった年である。マイクロソフトはパソコンを制御するプログラムであるOS(オペレーティング・システム)ウィンドウズによって、パソコン時代を制していた。

 しかし、スマートフォンの時代になり、その座をiPhoneのOSであるiOSのアップル、そしてアンドロイド端末のOSであるアンドロイドのグーグルに追われてしまったのである。まさにディスラプション(破壊)の発生である。

 マイクロソフトの舵を握るスティーブ・バルマーは、2011年までは携帯電話端末市場でナンバーワンの販売数を誇っていた北欧フィンランドのノキアを買収し、ウィンドウズを搭載したスマートフォン「ウィンドウズフォン」によって失地回復を狙おうとした。

 そして、スティーブ・バルマーは実に7000億円を費やして、2013年ノキアを買収することとなった。

 しかし、この決断はマイクロソフトの株価を引き上げることはできなかった。もはやノキアにはiPhoneやアンドロイド端末に打ち勝つだけの余力はなく、ウィンドウズフォン自体にも競争力はなく、マイクロソフトには有望な未来が見えなかったのである。