えみるが新人ケースワーカーとして歩み始める第1話から、高校生のアルバイト収入「不正受給」のエピソードが一応決着した第3話にかけては、生活保護制度そのものの解説に近いセリフや状況説明が目立った。もちろん、必要性は理解できる。

 2011年、本連載の準備を開始していたころの私は、「自分は何も知らない」と気付き、当時は出入り自由だった東京都庁の保健福祉局に飛び込み、「何から勉強すればいいんですか」と教えを乞うた。当時の私に必要だった説明は、ドラマの視聴者も必要としていたはずだ。しかし正直なところ、やや冗長な印象を受けた。

「ご覧になった方々の感想は、バラバラでした。強く感じられたのは、『この作品をどのように受け止めればいいのだろうか?』『この作品が、何を伝えたいのかわからない』といった戸惑いです」(柏木さん)

「どう受け止めればいい?」から
「本当に伝えたいこと」がわかるまで

 しかし第4話あたりから、視聴者の反応は変わり始めた。第4話は、夫のDVが原因で離婚したシングルマザーが、弱音を吐けないまま頑張りすぎ、自らを追い詰めてしまうエピソードだ。

「そのあたりから、ケースワーカーの仕事は『利用者の困りごとを正しく理解し、共有し、問題解決に向けて寄り添っていく仕事』であることが、じわじわと理解されたようです。主人公の義経えみるに対しても、その理解に基づいた叱咤激励が増えていきました」(柏木さん)

 ドラマでは、実父から息子への性的虐待(第5話・第6話)、「働けるのに就労努力をしない」という理由による生活保護打ち切りの可能性(第7話)、アルコール依存症(第8話)、子どものネグレクト(第9話)、生活が困難になった認知症の高齢女性と同居している小学生の孫のそれぞれの行き場探し(第10話)と、回を重ねるごとに、より重く複雑なテーマが扱われていった印象を受ける。しかしケースワーカーとして最も大切なことは、揺るがない。

「『ケースワーカーの仕事は、住民の命と暮らしを守ること』であることを伝えようとする一貫した姿勢、それがドラマ『ケンカツ』の最大の意義だったように感じられます」(柏木さん)