a『野蛮な来訪者 RJRナビスコの陥落』(上・下)
ブライアン・バロー、ジョン・ヘルヤー著(日本放送出版協会/1990年)(別の版元による新版は2017年)

 1988年、RJRナビスコのCEOが自社株買い付けによるレバレッジド・バイアウトを宣言。その経営陣グループに対抗する形で買収に名乗りを上げたのが、プライベート・エクイティ・ファンドのKKRグループ。当時、世界最大級だった3兆円の巨大買収劇の裏側では何が起きていたのか。本書は、100人以上の関係者に話を聞いたドキュメンタリーであり、古典的教科書でもある。

 会社は誰のものか。企業合併とは何のために行われるのか。そして、マネーゲームの勝者とは、結局のところ誰なのか。本書の終盤では、敗者と目された登場人物の多くが、実は巨額のマネーを手にしていたことが判明する。マネーゲームのメカニズムと、その時代が持つ意味を実感できる名著である。

(百年コンサルティング 鈴木貴博)