自分の意見が通らない。そういうことは、よくあります。では、自分の意見を通すためには、どのようにすればよいでしょうか。そこには、法則とマジックワードがあるのです!
「うまく書けない」「時間がかかる」「何が言いたいかわからないと言われてしまう」――そんな悩みを解消する書き方を新刊『人一倍時間がかかる人のためのすぐ書ける文章術 ムダのない大人の文章が書ける』から紹介していきます。
4STEPで自分の意見をとおしやすくする文章をつくる
私は、夜型より朝型で生活したほうがいいと思う。
なぜなら、午前中のほうが、頭が活発に働くからだ。
たしかに、( )。
しかし、( )。
相手に共感してほしい、どうしてもこちらの意見を通したい、自分のアイデアに自信がある─そういうとき、人はつい自分の意見を連呼してしまいがちです。
「登山は最高だ! 登山は実にいろんなことを教えてくれる。君も絶対登山したほうがいい。登山の楽しみを知らないのは、人生を半分損している。登山は本当にいいんだよ」
というように、言い方を変えつつも、同じ意見を繰り返してしまう人も多いのです。
熱い思いがあると、つい口数が多くなってしまうのでしょうが、いざ自分が言われる側に回ったらどうでしょうか。ちょっと引いてしまうのではありませんか。同じ意見であれば、「そうだよね! 本当にそう!」と一緒に盛り上がれるのかもしれませんが、特にそうでもない場合、途中で聞くのが面倒臭くなってきます。
強引なセールスがまさにこういう感じですが、あちらの言い分を一方的に押し付けられると、選択権・決定権が奪われているような感じを受け、どうも居心地が悪いものです。「押し切られてなるものか」と、反発してしまうかもしれません。
人は、押されれば押されるだけ嫌になってしまうものなのです。
ですから「押してダメなら引いてみろ」と言う通り、少し引いてみてこそ、かえって届くのです。
一回引き、バランスの取れた文章を書く。そのために、使いこなしたい言葉が「たしかに」です。
「たしかに」は譲歩の語で、自分とは対立する意見を受け止めるときに使われる言葉です。日常会話でも、
「たしかに君の言うこともわかる」
「たしかにそういう面もあるね」
というように使われます。
この「たしかに」が入ると、異なる意見の人を受け入れる余地がある、大人の余裕を感じさせるのです。暴走せず、冷静に意見を述べている人という印象が生まれます。
この「たしかに」は「でも」「しかし」という逆接とセットです。
「たしかに君の言うこともわかる。でも、田中さんの立場もあるからね」
「たしかにそういう面もあるね。しかし、そのデメリットよりメリットのほうが大きいよ」
というように、あとで改めて自分の意見を主張するものなのです。最終的にはこちらの考えを伝えるのですが、ひたすら言い続けるよりも、いったん向こうの見解を受け止めてから言うほうが、意見の違う人に届きやすくなるのです。「たしかに」と理解や共感を示すことで、聞く耳を持ってもらいやすくなるわけです。
前に意見・理由・具体例の3点セットをご紹介しましたが、「たしかに」の譲歩を取り入れると、次のような文章構成になります。4STEPとして覚えておくといいでしょう。
(1)意見 「私は~と思う」
(2)理由(+具体例) 「なぜなら~」(+「たとえば~」)
(3)想定される反論 「たしかに~」
(4)反論への反論(+再主張) 「しかし~」(+「だから~」)
上の「 」の表現を使うと、この型の文章が書きやすいでしょう。
(2)なぜなら、午前中のほうが、頭が活発に働くからだ。
(3)たしかに、冬など、早起きするのは楽ではない。
(4)しかし、辛いのは数日のことで、習慣化すれば体のリズムができる。(だから、長期的に見て、時間が有効活用できる朝型の生活スタイルを構築すべきだ。)
まとめである(4)の部分は、単に再反論をして終わるのではなく、改めて意見を明言するといいでしょう。(3)に対し、客観的に反論し、相手の意見を打ち消したうえで、(1)で述べたよりも力強く意見を述べて文章を締めるのです。
この順で書くことに慣れてきたら、「なぜなら」などの論理の目印の語を省くのがおすすめです。接続語が整理されると、すっきり洗練された文章になります。
(1)意見 (2)理由、具体例 (3)想定される反論 (4)反論への反論、再主張 の4STEP、ぜひ使いこなしてみてください。