本来の卸売市場はあくまでも流通拠点であり、見学に重きを置くべきではないという意見もあるだろうが、食の情報に関しての“今”をリアルに伝える役割も担っているのが卸売市場だ。

 その点を踏まえると、例えば足立市場は小規模ながらもかつての築地市場を彷彿させる魚市場の活気や臨場感があり、横浜市場では月に2度、第一土曜日と第三土曜日に一般開放日を設け、かつての築地のような魚市場独特の臨場感を誰でも楽しむことができる環境にあり、そのような取り組みはほかの首都圏の市場でも見られる。築地市場がなくなった今、周辺市場のそういった面も改めて着目されるようになるかもしれない。

築地市場経由だった荷物はどうなるか
移転1ヵ月前でも説明不十分、不安を抱えた状況

 一方で、築地、豊洲の周辺市場にとって移転に伴う心配事もある。最大の心配事の1つが、豊洲市場からの「荷物の転送」がどうなるかだ。

 もともと首都圏近郊の市場には、築地市場を経由して運ばれてきていた荷物も少なくない。当然ながら、そのままシフトすれば今度は豊洲市場から運ばれてくることになるわけだが、昨今報道されているように豊洲市場では物流機能がどの程度機能するか、未知数なところがあり、開場直後は混乱することも予想されている。

 そんな中で「1ヵ月前になっても豊洲市場で実際にどのように荷物が動くのか、説明やリハーサルなどが不十分」と不安を抱いている周辺市場関係者は少なくないのだ。

 私が冒頭で「今回の中央卸売市場の移転は本来、築地市場と豊洲市場だけの問題ではない」と書いたのは、まさにこうした点を指している。

「市場」という施設は、水産物を流通させるための道具にすぎず、それをどう使うかが重要になる。市場が移転したこれからは、今ある豊洲市場のさらに良い活用方法や施設の改善、豊洲市場の位置づけを改めて皆で考えること大事であり、それには豊洲市場関係者だけでなく、周辺市場の関係者も担う部分は大きいだろう。そうしたことは、まだじっくりと検討できていないのが現状で、豊洲市場を運用していきながら様々な調整がされていくことだろう。

豊洲はスーパーや問屋向けの市場
築地は高級店が仕入れる街へ

 さて、中央卸売市場が移転してしまった築地には、場外市場が残っている。場外市場に新たに作られた「築地魚河岸」は、冒頭で書いたように10月1日に正式オープンした。この正式オープンに伴い、一般客・観光客向けの施設からプロ向けの施設に一気にシフトしたことは先ほど説明した通りだ。