フジテレビ
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テクノロジーの進化でさらなる激変期に突入したメディア業界の最前線を追う本連載。第4回では2013年5月25日号に掲載したメディア特集「経済ニュースを疑え」で報じた、テレビのネット配信が進まない現状についての記事をお届けします。本連載第3回では、週刊ダイヤモンド2018年10月27日号で掲載した、民放各局が競い合って番組の配信を進めている記事を特別公開しました。合わせて読むと、ほんの10年前はテレビ局が今とは真逆の方針をとっていたことがわかります。

 2009年の中ごろ。米シリコンバレーはクパチーノ市のアップル社を見慣れぬ日本人が訪れていた。それは、テレビ局の雄、フジテレビジョンの編成局幹部らだった。

 フジの幹部は、ここでアップルの配信サービス「iTunes」の担当幹部に交渉を持ちかけた。内容は、すでにiPodやiPhoneのブームで世界的に普及したiTunesに、自社の番組を配信することだった。

 アップルはすでに米国では番組配信を始めており、日本では、フジが先鞭をつけようとしていたのだ。日枝久会長自身も「放送を超えたアライアンス」と強調し始めたころで、花形の編成局にもコンテンツビジネスに前向きなスタッフがそろっていた。

 「Sounds good(いい感じだね)」

 アップルとの会合でこう返答を得た幹部らは日本に帰り、本格的な準備を進めることになる。

 具体的には、当時すでに放映されていた人気ドラマ「ライアーゲーム」の続編を、iTunesへの配信を念頭に撮影することを検討していた。ネット配信は、出演者の権利関係で芸能事務所などとの交渉も必要となるのだが、そうした部分をあらかじめクリアするようにしていたのだ。

 ところが、この夢のプランは幻と消えることになる。