松田 学生さんのオーケストラを指揮されることもありますが、若い方に特に伝えたいことというのはありますか。

マエストロ 音楽を奏でるうえで常に私が学生さんに伝えているのは、次の3つのことです。まず考えること(Think)。それを愛すること(Love)。そして、それを信じること(Belief)。自分の頭脳(mind)とハート(heart)とソウル(soul)を全部使うこと。どんな音楽もみな素晴らしいけれども、偉大な頭脳、大きな情熱、深い魂、この3つのコンビネーションはクラシック音楽にしかないものであり、これほどソウルに深く触れものはないと思っています。それが、音楽のパワーにつながっています。

松田 おっしゃるとおりですね。マエストロの指揮からは、毎回、その思いがひしひしと伝わってくるようです。

マエストロ そう、音楽は素晴らしい。でも、音楽の深遠さを理解するにはある程度の時間がかかると思うので、今回の松田さんの本のようなところで紹介してくれることを、大変うれしく思います。私自身も長年にわたって作品を紹介してきたので、私たちはこうした音楽への愛や情熱を共有していると思っています。音楽という「魔法の島への旅」があるとすれば、松田さん自身やこの本がそういう島の存在を広く知らせてくれる役割であり、その島はここだよと示すガイド役が私の役割でしょう。