ハイテク投資家として知られるソフトバンクグループ会長兼社長の孫正義氏は今年の春、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子について、「すばらしい人、そしてすばらしい投資家」だと表現したことがある。その称賛は一方的なものではない。ムハンマド皇太子も資金規模が920億ドル(約10兆3500億円)の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に対し、サウジ側から450億ドル提供することを約束。同ファンドは米シェアオフィス運営大手ウィーワークなど、勢いのある新興企業へ数十億ドル規模の投資をしている。だが両者のこのパートナーシップが今、ビジョン・ファンドの評判を傷つけ、その未来に影を落とす恐れが出ている。サウジアラビアの反体制派記者、ジャマル・カショギ氏がサウジの工作員らによって殺害され、遺体も切断されたとトルコ政府当局者らが主張しているためだ。同当局者らはムハンマド皇太子が殺害を指示した可能性があるとみている。一方、サウジアラビアはこれを否定している。