ドナルド・トランプ米大統領は、1987年に結ばれた中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を検討していることを明らかにした。ロシアが過去10年にわたって同条約に違反していることは誰もが認めている。しかし、どういうわけか、今回の行動は無謀なものだとの声もある。無謀なのはトランプ大統領なのだろうか。どんな違反があろうとも条約は神聖なものだという教義的な核軍縮が好みなら、それもいいだろう。INF条約は射程500~5500キロの地上発射型の弾道・巡航ミサイルを禁止するもので、冷戦末期の産物だ。ロナルド・レーガン米大統領(当時)と北大西洋条約機構(NATO)は1980年代初頭、ソ連によるミサイル配備に対抗すべく、欧州に中距離ミサイルを配備した。その後何年にもわたる厳しい交渉の末、ミハイル・ゴルバチョフ書記長(当時)は、米側が提示した条件で双方のミサイルを撤去するという穏当なINF条約に合意。同条約は外交の勝利と称えられた。