日本の里親などの委託率は、全国平均で18.3%。何らかの事情で実親と暮らせない子どもの多くは、施設で暮らしている。里親委託率は徐々に増加傾向にあるが、里親制度の普及にはまだ時間がかかりそうだ。現場で社会的養護が必要な子どもと接する大人たちは、何を見ているのだろうか。(取材・文/フリーライター 大藪順子)
10月と11月は
東京都の「里親月間」
10月と11月は、東京都の「里親月間」。里親制度とは厚生労働省曰く「さまざまな事情により家庭での養育が困難になった子どもたちに、温かい愛情と正しい理解を持った家庭環境の下での養育を提供する制度」だ。
今年の東京都の里親月間は、10月1日に里親制度の改正と共に始まった。この改正では、里親になれる人を増やすためなどの理由から、里親の年齢制限など条件を緩和したのだ。
厚生労働省の2018年3月の統計によると、虐待、経済的理由、親の病気などの理由で実親と暮らせない子どもの数は約4万5000人。日本の里親等の委託率は全国平均18.3%だが、新潟市で51.1%、静岡市で45.5%など、自治体によりその現状は大きく異なっており、全体的には里親委託が増える傾向にある。それでも施設で暮らす子どもたちが全体の81.7%と圧倒的に多く、里親制度が普及しているとは言い難い。
ちなみに、里親制度が日常の中で身近な風景となっているアメリカでは、社会的養護が必要な子ども約34万7000人のうち、里親委託が45%、親戚に預けられている子どもは32%、そしてグループホーム5%、施設7%と、集団生活をしている子どもの数が圧倒的に少ない(※2016年アメリカ 合衆国保健福祉省児童家庭局の統計)。こうしたアメリカの統計の裏には、日本とは大きく違う住宅事情や世間体を気にしない国民性がある。