東日本大震災の発生から二年が過ぎ、「絆」という言葉だけでは覆い尽くせない問題が露呈してきた。そのひとつが、児童養護の問題である。被災地の子どもたちは、今どんな状態にあるのだろうか。「被災した子ども」という視点から、児童福祉の専門家とともに、社会的養護のあり方について考える。(取材・文/ジャーナリスト 石島照代)
1698人もの子どもたちが
親を亡くした東日本大震災
東日本大震災の発生直後、津波が家を押し流す悲惨な光景を見ながら筆者がずっと考えていたのは、「子どもはどうなるのだろう」ということだった。子どもを亡くす親がいるように、親や親類縁者を亡くす子どもも当然いる。そんな子どもたちは今回、どれくらいいるのだろう…。次々に映し出される被災地の状況を見ながら、とにかく子どもたちのことが気にかかった。その理由は、筆者自身が児童養護施設で育ったことが大きい。いちばん大変なのは、子どもの保護・養育義務を持つ大人であることは分かっている。だが、子どもだから何もできないという無力感から来る、とまどいや絶望感から逃れられない子どもも少なくないはずだ。
児童養護施設は、両親の離婚や死亡、ネグレクト(養育放棄)や虐待だけでなく、さまざまな問題によって安定した生活環境の確保ができない子どものための施設として、震災前から機能してきた。それだけに、震災で安定した生活環境が失われた子どもをフォローする場所として、児童養護施設に対する期待は大きいものがあると考えられる。
これに対して、立正大の大竹智教授(児童福祉)からは意外な話が返ってきた。なんと、「震災直後に限って言えば、震災関連を理由とした新規入所は2人だけ」だったそうだ。震災直後の厚生労働省の反応はとても早く、3日後には全国の養護施設の空き状況を把握できていたにもかかわらず、である。
震災発生から9ヵ月が経過した平成23年12月末時点での厚生労働省の調査によると、全国に震災孤児と遺児は合計で1698人いた。震災孤児とは両親とも死亡ないしはひとり親家庭の場合は片親が死亡した児童のこと、震災遺児とは両親のどちらかが死亡した児童のことである。いったい、1698人の震災孤児と遺児は、どこで、どう過ごしていたのだろうか?