タックスヘイブンの法人を使った、中国系投資家による投資も見られる。【13】JR熱海駅近くにある小規模店舗ビルで、日本人同士が当時の相場よりもやや高い価格で商談中だった。別の地元関係者によれば、そこに中国系投資家がほぼ倍の値段を付けて即買いしたそうだ。ここの登記簿謄本によれば、物件の所有者名は、タックスヘイブンである英国ヴァージン諸島の法人名義となっている。実は冒頭に出てきた【12】の「熱海パールスターホテル」の土地所有者も、英国ヴァージン諸島の法人だ。【12】と【13】の法人名が似通っているため、複数の地元関係者の間では「同一の投資家か、お互いに近しい関係ではないか」との観測も広まっている。
 
 こうした状況を受け、現在は局所的に地価が高騰している。柳田氏によれば、熱海駅周辺では3年前の2015年は相続税路線価の1.2倍程度(おおむね公示価格水準)での取引が一般的だったが、「2016年には1.5倍程度でも取引が成立し、2017年には一部で3倍を超えるケースも見られるようになりました」という。

 この駅周辺での地価上昇の動きが、今後は観光需要の見込める海沿いを中心に周辺部へ波及する予兆もある。その証拠に、前出の地元不動産関係者によれば今年の春、海沿いのとある土地では相続税路線価の約4.6倍で買いたいという投資家がいた。ところが、売り主は5.8倍という強気の価格を提示した。結局、その商談は成立しなかったが、「特に海沿いの物件所有者は強気になっているようです」(柳田氏)。

 熱海の観光客の主力は、熱海にネガティブな先入観を持たない若者に移りつつある。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、今はまだ少ない外国人観光客の増加もこれから見込める。だから熱海の成長余力は大きいとみる投資家も多い。それが、ホテル計画がラッシュの背景だ。

 もっとも、リゾート地は金融情勢や自然環境の影響を受けやすい。この勢いはどこまで続くのか。また、中国系投資家がどこまで食指を伸ばしてくるのか。柳田氏は「すでに熱海のホテル適地は限定的です。そのため、投資家の目が隣接エリアに向かうことを期待し、熱海市の隣の伊東市では、沿岸部の閉鎖ホテルに路線価の10倍を付ける日本人売り主も出てきています」と話す。

 今はまだ局地戦とはいえ、日中入り乱れた投資が熱を帯び、ホテル用地争奪戦が激しくなってきた熱海からはしばらく目が離せない。