「IBMの時価総額の3分の1という点からみれば、確かに、『賭け』という見方はできる。だが、これはロジカルな流れ。オープンソーステクロジーを維持しながら、マルチクラウドおよびハイブリッドクラウドの幅広い選択肢を提供できるようになる」。先頃、発表されたIBMによるレッドハット買収にについて、こう語るのは、米IBM Global Technology Services担当シニアバイスプレジデントのマーティン・イェッター(Martin Jetter)氏だ。同氏は、2014年まで日本IBMの社長を務め、現在も、日本IBMの取締役会長を兼務する。日本の企業の課題や、今年から新たにスタートしたIBM Servicesの成果、そして、レッドハット買収の狙いなどについて聞いた。

質の高さを人手でカバーしてきた
“日本流”に限界を感じる

時価総額の3分の1を投じて<br />レッドハットを買収したIBMに勝算はあるか米IBM Global Technology Services担当
シニアバイスプレジデント
マーティン・イェッター(Martin Jetter)氏

――グローバルの視点から見たときに、日本の企業のどんなところに課題を感じますか。

イェッター(以下・略) 日本に関する調査を見ると、生産性が高まらない、あるいはデジタルトランスフォーメーションが、グローバルに比べて遅れているという傾向があるのは確かです。その背景には、日本の企業は、質の高いサービスを提供するのが特徴であり、その分、人が必要となり、集約型の構造に陥りやすいといった傾向が見逃せません。これが生産性を追求する際に、マイナスに働くことになります。

 また、デジタル化しようとしても、日本が求めるサービスに対応するために個別最適化したり、カスタマイズを行ったりしていることが足かせとなり、適用範囲が限定的になってしまうといった側面もあります。デジタルやクラウドのメリットを生かしきれないという状況が起きやすいともいえます。これは、日本のあらゆる業種で見られる傾向です。ただ、日本の大手企業や中堅企業は、デジタル化に向けて積極的な姿勢を見せているのは明らかです。

 日本の企業は、デジタルのメリットを享受するのに、グローバルに比べると少し時間はかかるかもしれませんが、メリットを得られると判断したところから、デジタルトランスフォーメーションを行うことで、成果を生んでいる例が出ています。たとえば、Watsonを導入しているいくつかの日本の企業では、グローバルで見ても先進的な事例が生まれています。こうした成果が、これから出てくることを期待しています。