「パルム」と「りゅえる」が支えたにぎわい
「品川のムサコ」武蔵小山は、東急目黒線の急行に乗ると「目黒」の次に停まる駅である。
品川区にとっては西の玄関口であり、荏原地区の中心となる街だ。2006年に駅は地下化され、線路跡地には駅前広場ができ、駅ビルも造られた。
前回取り上げた「川崎のムサコ」武蔵小杉はここ10年余で急速にタワマンが立ち並んで人口が増えたが、武蔵小山は全長800mの武蔵小山商店街PALM(パルム)が有名な古くからの商業地である。
そのにぎわいは、駅から地上に上がるとすぐ目に飛び込んできた立ち食い焼き鳥「鳥勇」から始まる武蔵小山飲食店街「りゅえる」も支えていた。フランス語で「小路」を意味する迷路のような街区の中に、全盛期には200軒近い飲食店がひしめいていた。
3年前、この新宿ゴールデン街めいたはしご酒が楽しかったラビリンスは、2つの都市再開発事業の開始により消滅した。当地に生まれてチェーン展開している晩杯屋(ばんぱいや)、移転営業中のもつ焼きの豚星などを除き、多くの店は廃業してしまった。