自ら苦労すること
孫家は「助けない」

 あるとき、「泰蔵な、経営は(ゲームの)スーパーマリオブラザーズのようなものだ」と言われたことがあります。

 「俺はな、もう15面(ステージ)ぐらい進んでいるが、おまえは経営者としてはまだ1面なんだ。もし、1面もクリアせずに、4面にワープする土管を使ったとする。そうしたら、おまえは4面で瞬殺、秒殺だ。クリアなんて到底できない」と。

 ですが、ここで兄は、4面をクリアできなくてもどうってことはない、と続けます。

 コンティニューできずに1面からやり直したとしても、「目をつぶってでも1面をクリアできるようになれ」と。「2面も左手、指1本でクリアできるぐらいになれ」というのです。

 「巨人の星」の「大リーグボール養成ギプス」で訓練するかのような発想だったので、僕が相談したところで、「泰蔵、おまえもがんばれ。でも、俺は債務保証はしないよ」と言われるのが目に見えていました。

 一方、当時、それでも僕のことを信じてくれる方々がいました。その方々には本当に頭が上がりません。そういった方々の支援を受けて今の僕があります。

 僕には、このような「痛めつけられる」という経験があって、鍛えられました。ただ、現代の若い人たちにそれを求めようとも思いませんし、それは酷な話です。

 だからこそ、(失敗しても再起するのが簡単な)スタートアップのエコシステムの持つ重要性を感じているのです。

 ほとんどいなくなったとはいえ、いまだに債務保証やそれに近いことを求める投資家がいます。そういった関係はブチブチと切っています。僕の前で起業家に債務保証させるなんて許さない、と目を光らせているのです。

 なお、その後大ヒットしたスマートフォンゲーム「パズル&ドラゴンズ」を生んだガンホー・オンライン・エンターテイメント(旧オンセール)の初代社長を務めたのは、確かに僕です。

 ですが、ガンホーの成功は森下(一喜社長)の功績です。僕が何かをしたとはいえないでしょう。僕は早々に社長を降りて彼に経営を任せました。(次回に続く)

構成/小島健志

*「孫家の教え」は隔週連載です