『週刊ダイヤモンド』2018年8月11・18日合併特大号の第一特集は「2018年版 決算書100本ノック!」。特集の発売に合わせた特設サイトでは過去の財務特集の人気記事や漫画などを無料で公開。今回は2017年6月10日号「「会計&ファイナンス超理解」」から、著名経営者の財務哲学を紹介する。財務が経営の根幹である以上、財務に対する確固たる哲学を持っている経営者は多い。著名経営者の財務へのこだわりを過去の「週刊ダイヤモンド」での発言から考察したい。(掲載される数字は全て雑誌発売時点のもの)

 経営する会社を、日本を代表する存在にまで成長させた著名な経営者たち。彼らはどのような財務の哲学を持っているのだろうか。過去に「週刊ダイヤモンド」に登場した発言を中心に、著名な経営者たちの財務哲学をひもといていく。

 今や、純利益1兆円を超える企業となったソフトバンクグループ。その大きな飛躍のきっかけとなったのは、2006年のボーダフォン買収による携帯電話事業への進出だが、それよりも前の01年には高速インターネット通信ADSL事業へ進出。その際、孫正義社長はこんな発言をしている。

孫、本田、稲盛、御手洗はどう考えたのか?著名経営者の財務哲学を知るPhoto by Kazutoshi Sumitomo

 「コストを積み上げて価格を決めるという方法が一般的な経営のやり方だと思うが、それは売り手の論理。私はまず値段を決め、その価格ならユーザーをどのくらい獲得できるかと考え、事業を組み立てた。(中略)どういう事業構造、組織、仕入れ体制を組めばいいか逆算していった」(本誌01年6月30日号)

 損益計算書(PL)では、売り上げから費用を引いていくと利益がわかる。他の大手通信会社が費用を積み上げていって、「この価格にしなければ利益が出ない」と考えるところを、孫社長は逆の発想に立ち、月額2280円という当時としては格安の価格を打ち出したのだ。

 そのソフトバンクの成長を財務面で支えた人物として、北尾吉孝・SBIホールディングス社長が知られるが、財務に詳しい有名企業の番頭は他にもいる。