「四ツ谷課長、今日も直行ですか?直行は事前に申請してください」

 四ツ谷課長は、三田支店長をじろっと睨みつけながら、高圧的な態度で言い返してきた。

「取引先から急に呼び出されたんだよ。申請する時間なんてあるわけねぇーだろ!」
「そうでしたか。すみません。それからもう1つ、先日のクレーム処理の件、詳細を報告してもらえますか?」
「報告しても、あんたは結局何もできないじゃないか。みんなもあんたの下ではやりにくいって言ってるんだよ!?」

 三田支店長は下を向いて、黙って席に着いた。他の従業員は何も聞かなかったふりをして黙々と仕事をしている。三田支店長は心の中でつぶやいた。

(いくら年上だからって、上司に対する口のきき方があるだろう。どうしたらいいんだ!?)

 三田支店長は課長の嫌がらせのせいで、日々大きなストレスとなっていた。このところ手足が震えるようになり、呼吸も浅くなっているのを感じた。トイレに駆け込んで顔を洗うと、鏡の前に立って自分の顔を見つめ、「しっかりしろ」と自分に言い聞かせた。

支店長の妻からの相談で
課長の言動に疑問を持ち始める社長

 ある日曜日、自宅の庭で手入れをしていた丸山社長の元に、三田支店長の妻から電話がかかってきた。

「叔父さん、お休みの日にすみません。実は相談があって…」

 丸山社長が詳細を聞いていくと、「甥がF支店に異動して以来、体調を崩しがち。症状は毎朝ひどい下痢に襲われ、最近は食欲も落ち、とても心配している」という。妻が「叔父さんに相談してみたら?」と言っても取り合ってくれないので、内緒で連絡してきたのである。

 さらに妻の話によると、四ツ谷課長は、自分より年下で支店長として配属された三田支店長に敵意を持ち、他の社員を巻き込んで、三田支店長を無視したり、聞こえるように悪口を言ったりしているそうだ。また、三田支店長のやり方をみんなの前で批判し、怒鳴りつけたりしたこともあるという。

 丸山社長は、F支店で支店長3人がごく短期間に退職していることに頭を悩ませていた。さらに業績も良くないことから立て直しのために、当時E支店にいた三田支店長に白羽の矢を立てたのだった。

 ところが三田支店長の妻からの情報を聞くうちに、「年上部下課長の嫌がらせ」という意外な情報に戸惑っていた。すると、丸山社長は支店長3人の退職のことが頭をよぎった。

「支店長3人の相次ぐ退職は、もしかしたら課長の言動が原因では…?」