アライアンスの今後と
世界の自動車業界への波紋

 今後、日産とルノーの関係は変化する可能性がある。ルノー・日産・三菱自動車の3社アライアンス体制の背景には、フランス政府の利害が深く、密接に絡んでいることは重要だ。

“産業政策のプロ”との評価を受けてきたマクロン大統領が産業政策を推進するために、国内自動車メーカーの競争力向上は非常に重要である。

 自動車のような組立型の産業は雇用増加にもってこいだ。マクロン大統領としては、独フォルクスワーゲンなどを上回るフランスの自動車企業を生み出し、今後のEV開発競争などのイニシアチブを取りたいだろう。日産のリーフをはじめとする電気自動車の開発力は、どう考えても手放すわけにはいかない。

 そのためマクロン大統領は、ルノーと日産および三菱自動車の経営統合を重視してきた。ルノー・グループがゴーン容疑者のCEO任期を2022年まで延長した理由は、3社の経営統合を進めるためだろう。ルノーが逮捕されたゴーンCEOの解任を見送った理由は、同氏以外に3社の経営統合を進める手腕を持つ人材が見当たらないからだと考えられる。

 今後、フランス政府はルノーに3社の経営統合の実現を求めるだろう。

 それは、世界の自動車業界の再編につながる可能性がある。日産が日本企業としての再出発を目指すのであれば、ルノーとの関係は悪化する可能性が高い。その場合、他の自動車メーカーなどが日産に提携などを申し出ることが考えられる。

 そうなると、EV技術などの取り込みや生産の効率化を目指して、アライアンスや買収を真剣に検討する企業は増える可能性がある。すでにIT先端企業はEV開発や自動運転テクノロジーの開発を進めている。今後の再編は自動車メーカーだけではなく、異業種を巻き込んだものに発展することも考えられる。

 ゴーン容疑者の逮捕を受け、3社アライアンス体制の先行き不透明感は高まった。フランス政府の利害や他の自動車メーカーなどの利害が複雑に絡み、今後の自動車業界はより大きな変化に直面する可能性も高まったと考える。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)