• 設備投資増加にも寄与せず
税制改革の最も強力な正当化理由は、企業の投資行動に及ぼす影響だった。理論的には、海外での利益の扱い、名目税率の低下、減価償却の加速により、設備投資の前倒しが喚起されるはずだった。しかし、実際には、企業は期待通りの行動をしていないようだ。設備投資は増加したものの、減税なしの場合に想定された以上に増えたわけではない。むしろ、最近の設備投資の増加は、原油価格下落と急激なドル高の悪影響を受ける以前の傾向に戻っただけのように見える。つまり、原油価格が底を打ち、ドル上昇が一服したため、投資が回復し始めたわけだ。
さまざまな出来事が同時に起きる中、ある特定の改革の影響を見極めるのは困難だ。数年間上昇を続けていた株価は、税制改革以降ボラティリティは上昇したものの横ばいだ。関税はコスト上昇につながり、不透明感が強まった。人件費上昇は、低い水準からではあるが加速し続けている。これらの要因は、企業幹部に投資やM&A、株主還元を減らすよう促す。法人税減税によってこれらの悪影響が相殺されている可能性もある。そのため、何も変わっていないように見えるのかもしれない。しかし、税制改革は企業が設備投資などの支出を増やすのではなく、単に利益剰余金を増やすためだけの意味のない富の移転だった可能性もある。



