身なりのいい男性が放ったオナラと、ある一言
ある平日の昼、筆者は駅構内のトイレに入った。便器の前に立ち、チャックを下ろして小便をする筆者。横にはスーツを着た50代後半くらいの男性が、同じく小便をしている。身なりの良さと顔からにじみ出る威厳から、会社内でそれなりのポストに就いていることがうかがえる。二人とも前方を見つめながら、ただただ黙々と小便に集中している。
その時である。「バファッ!」と横から大きな破裂音がした 。オナラだ。男性が屁をこいたのだ。小便をしていると肛門が緩むため、同時にオナラが出てしまうことがある。きっと男性もそうだったのだろう。もしかしたら急いでいたのかもしれない。しかし、そんなことに思いを馳せる間もなく、すかさず男性は一言、「失敬」と低い声で呟いた。
なんて紳士的な男性だろう。前を向いたまま「失敬」とだけ呟く凛とした姿勢には、清々しさすら感じられた(臭かったけど)。しかし、この場合、筆者はどのように返事をすればよかったのだろうか。その時は、あまりに突然のことに「はあ……」と気の抜けた声を出すだけで精一杯だったが、男性の誠実さに答えるもっと適切な応対があったように思う。