冷戦時代には「UKUSA」はもっぱら共産国を対象としていたが、その後は、日本、ドイツ、フランスなど同盟国も標的とし、それらの経済、技術、政治外交などの情報を収集している。

“Five Eyes”(5つの目)ともいわれる5ヵ国の情報機関の連携による世界中の通信の監視は単なる各国の政府間の協力を超え、闇の権力となっていることが、米国のNSA(国家保全庁)の元職員エドワード・スノーデン氏の暴露でも明らかになっている。

世界のサイバー覇権防衛で
中国ハイテク企業を標的に

 「エシュロン」の中心であるNSAは推定人員3万人、米4軍の通信情報部隊約10万人を傘下に置き、全世界に約3000ヵ所の受信所を置いているとされる。

 1時間に数百万もの電話や電子メールを傍受し、各国の大使館や省庁などのコンピューターにも侵入、米国製のコンピューターの基本ソフトには「バックドア」(裏口)が設けられ、NSAの信号でデータが流れる仕組みだとか、暗号化するためのソフトウェアもNSAが解読可能なものしか認可されない、といった疑惑が語られる。中国製の機器についても「バックドア」が設けられている、との説がある。

 米国は他のアングロサクソン4ヵ国と協力し、世界のサイバー覇権を握ってきた。だが中国の華為や中興通訊(ZTE)が進めつつある「5G」(第5世代)の移動通信システムは、通信速度が現在のものの100倍、容量は1000倍にもなるといわれる。

 その実用化では中国が米国に先行しそうな形勢で、米国のサイバー覇権を経済でも情報面でも揺るがしかねない。

 中国が米国の技術を窃用している「知的財産の侵害」だけなら、しょせんは後追いにすぎないが、米国の理工系大学院には中国人留学生が約8万人もいて、博士号を得る者が年に約5000人(日本人は約200人)もいる。

 その大部分は米国で最先端の技術開発に従事したのち帰国し、中国の技術を急速に進化させている。

 米国は残る得意分野の電子技術でも中国に追い抜かれるのを防ごうとし、特に躍進が著しい華為と中興通訊を目標としているようだ。

(軍事ジャーナリスト 田岡俊次)