確かにネタを見直してみると、最初におかしなことを話し出したときのテンションは意図的に低く、徐々に計算されたようにエスカレートしていきながら、持ち時間4分の後半には、会場全体がその異常な世界に巻き込まれています。言われてみれば、「なるほど、このあたりが上手いんだ」というのが私にもわかって勉強になります。しかし世の中では、「M-1グランプリにその能力評価は必要なの?」という議論が起きるわけです。

 おそらく、この番組が抱える一番の問題は、審査員側は能力評価50%、業績評価50%あたりを念頭において、プロの審査をしていること。そして視聴者側は「一番面白いやつが勝つ」という煽りを真に受けて、100%の業績評価を期待していることです。

審査基準を詳しく開示し過ぎると
バラエティ番組はつまらない

 ネットで問題になった審査を見返してみると、必ずしもレジェンドの審査員は能力評価に偏りすぎているわけではありません。能力評価的には別の審査員が「自虐ネタを持ってくる段階で選択眼がよくない」といった基準である組を批判したくだりがありましたが、別の組がその自虐ネタで会場を沸かせたら、その点については業績評価をふまえてきちんと加点をしている。かなり深く見ているのです。

 テレビのバラエティ番組の場合は、詳しく審査の基準を開示しても面白さが半減するだけなので、視聴者をある程度置いていってしまうことを覚悟した上で、そのあたりを説明抜きにする場合が多いものです。

「審査基準は能力評価50%、業績評価50%、具体的にはこの17の項目をそれぞれ審査員の主観を交えて評価しています」と言うよりも、「いちばん面白いコンビを評価します。今年の漫才師の頂点を決めるのです」と言い切ったほうが、わかりやすいからです。